デジタル活用もひとつの手、思い出を残す効用も
本に関しては、デジタルを活用して手放していくのもよいでしょう。たとえば最近では、表紙の写真をデータとして残せる読書記録アプリがあります。表紙だけでも十分に思い出として残ります。今の時代に合ったやり方だと思います。
そもそも、「たくさん本を読ませたほうがいいかどうか」という話には諸説あり、私はどちらでもいいと思っています。少なくとも、本の冊数と子どもの成長とを短絡的につなげて考える発想は適切ではないと考えています。
コレクションするように本を残したとしても、子どもにとってはただの通過点。子どもは毎日新しいチャレンジに忙しく、読み終えた本をあれもこれも思い出す暇などありません。
大人でも、やりたいことがたくさんあって人生を楽しんでいる人は、「過去に戻りたい」などと言いませんよね。まして子どもは目の前のことや明日のことのほうが楽しいので、親ほど過去にこだわりはないのです。
おもちゃも同様です。お子さんが小さいと、お人形や鉄道玩具などであふれ返っているご家庭は多いと思いますが、子どもはしだいに興味がなくなります。それが成長です。
なお、思い出を残しておくことの効用として、子どもにとって安心感の土台となってくれるという点が挙げられます。心身共に大きく成長する思春期などは、思い出のものに触れたり、よく読んだ絵本を開いたりすることで不安定な心が落ち着くことがあります。それは過去を懐かしむのではなく、幼児期以前の自分を味わうことで安心を得ているのです。
だから、思い出のものはある程度取っておいたほうがいいとは思います。そういった観点からも、処分を進める際は、本人がどれを残したいのかという気持ちを大事にしてあげてほしいと思います。
PROFILE 小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。
取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!