ひとりの声かけでも「前向きな応援」に変えられる

── 勝手に指示を出したり、ため息をつくのは多くの親が無意識に行っているかもしれません。応援席ハラスメントを防ぐためにできることはありますか?

 

藤後先生:まずは、ミスに対するネガティブな発言をやめ、「ドンマイ」「次あるよ」など、ポジティブな声かけに変えることです。

 

最初から他の親の声かけまで変えるのは難しいので、自分だけでも勇気をもって前向きな声出しをしてみてはいかがでしょうか。

 

1人で難しいときは、ご家族や親しい友人を誘ってみてください。2人いれば勇気がわきます。

 

その際は自分のお子さんだけでなく、よそのお子さんにもぜひ前向きな励ましやほめ言葉を。

 

その場の雰囲気につられてつい否定的な声かけをしている親もいるので、少しの工夫でポジティブな声かけに変えられるはずです。

 

勇気や覚悟が必要ですが、徐々に雰囲気を変えられるといいですね。

 

── たしかに、応援は雰囲気につられることも多いです。でも、一部の保護者の行動だけでは、ため息や指示出しを防ぐのが難しい場合はどうしたらよいでしょうか?

 

藤後先生:その場合は、チーム方針として応援席ハラスメント防止を呼びかけてはいかがでしょうか。

 

応援席ハラスメント防止をうたうカードを配布する団体や、どんな言動がハラスメントに該当して子どもにどう影響を与えるかなど、保護者向け研修を行うチームも増えています。

 

日野市のR&Bラグビークラブは、“怒鳴らない”、“問いかける”、“考えさせる”、“気づかせる”、“楽しむ”の5か条を掲げ、保護者研修会を行っています。

 

応援席では「拍手のみOK」で、あえて「声を出さない」ようにしているそうです。それはコーチも同じで、選手への指示はコーチから伝言されて子どもが伝えるようにしているそうです。

 

前向きな声かけに変えたり拍手のみOKは、いずれもポジティブな態度で応援する選択肢です。スポーツの種類やチームの考え方にいろんな取り組み方があるはずです。

 

── 各地で「変えよう」という動きが出ているのですね。でも、親自身が子どものときにネガティブな声かけを受けてきた場合、言動を変えるには努力が必要です。じつはもっと根深い問題なのかもしれませんね。

 

藤後先生:保護者のなかにも、スポーツで傷ついた経験をしてきた人がいることを忘れてはいけません。

 

背景には、中学や高校の部活で成果を出さなければならない短期間での要求や、競争には勝たねばならない価値観や同調圧力などがあるでしょう。

 

さらにスポーツだけでなく、学業や仕事でも親である私たちはさまざまなプレッシャーにさらされています。

 

自己肯定感が低めの親御さんは、わが子がスポーツでミスをすると自分自身が失敗したり責められているように感じがち。

 

これが子どもへのいきすぎたネガティブな言動につながります。ご自身の心の動きをみつめ、親と子どもの問題を切り離して考えるだけでも行動は変わります。