約4割の親は子どものミスを「自分ごと」に感じる

── 子どものために応援しているはずが、子どもを傷つけてしまうなんて。どうしてそこまで親は熱くなってしまうのでしょうか?

 

藤後先生:その“子どものため”が行きすぎてしまうのでしょう。

 

根底には、子どもが失敗すると“親自身も失敗”したように感じ、子どもがほめられれば親もほめられた気分になります。

 

子どもの行動が「親の自己評価」に結びついているかのように錯覚する構造があるのです。

 

そのため親自身が「なんとかしなければ」と追い立てられ、必要以上に子どものプレーやその評価を改善しようと熱くなってしまうのです。

 

これは、スポーツに限らず、習い事や親子関係全般にもいえることです。

 

私たちが小学生の母親200人を対象に行った調査(※1)では、「わが子のことに対して、他人から間違いや欠点を指摘されると、自分のすべてが否定されたように感じる」という項目に「少しあてはまる」「あてはまる」と答えた割合は38%にのぼりました。

 

アドラー心理学の考え方を用いると、これは親子間の“課題の分離”ができていない状態で、「対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと」により生じるので、「他者の課題を自分とは切り離す」必要を説いています。

 

親子でも子どもは他者。子どもの課題を解決するのは、子ども自身です。

 

放任主義ではなく、子どもの状況を把握して必要時にはサポートする、「見守る」態度でいれば、子どものミスを自分ごとのように感じて苦しくなることはありません。

 

──「子どもへの言動」が「親の評価」に直接結びつく考えにとらわれると、親子ともに苦しいですね。子どもと一体化しやすい観点では、親が運動経験者のほうがより応援席ハラスメントが起きやすいのでしょうか?

 

藤後先生:それは一概にいえません。ただ、親自身の劣等感や自己評価が低い場合、“もっとがんばらせないといけない”、“自分のようになってほしくない”と考えがちで、言動に表れやすいでしょう。