休日の昼下がり。野球やサッカーなどグラウンドを駆けめぐる子どもたちと、声を上げて応援する親。よく見ると、“うちの子楽しそうじゃない…”、そう感じる場面があったら、「応援席ハラスメント」が原因かも。その真相について子どもの心理専門家に話を聞きました。
親の“舌打ち”や“ため息”もハラスメントに
── 現在、地域のクラブ活動などでスポーツに参加する小学生は6割近く。子どもの活躍を応援する保護者も多いですが、声かけが行きすぎて“応援席ハラスメント”として問題視されることもあるそうですね。
藤後先生:厚労省の職場ハラスメントを参考に定義づけしていますが、親子や応援席との関係で適正な範囲を超えて子どもに苦痛を与えるケースを“応援席ハラスメント“と呼びます。
「がんばれ」は応援の範囲ですが、「なんでできないんだ?」「ひっこめ」「何やってるんだよ」など、子どもを傷つける否定的な発言はハラスメント。
プレーする子どもに伝わる意図的なため息や舌打ち、応援席の雰囲気の悪さやマナー違反も子どもたちは嫌だと感じています。
「選手交代させろ」「右を狙え」など、本来は監督が出すべき指示を親が口に出し、プレーヤーや指導者にも嫌な思いをさせます。
これらはすべて“応援席ハラスメント”といえるかもしれません。
──「バカ!」など強い表現での罵倒や、審判や相手チームへの批判が良くないことは一定の理解をされているようですが、舌打ちもハラスメントに含まれるのですか?
藤後先生:2017年にバスケットボールスクールに通う小中学生を対象に行った調査では、言葉だけでなく、チームの親集団に舌打ちやため息などを含む「ネガティブな非言語的行動を行ってほしくない」と2割が回答しました。
度重なる意図的な舌打ちは精神的に相手を追い込みます。ご自身も仕事でミスとしたときに、上司から真横で何度も舌打ちされたらどんな気持ちになるか想像してみてください。
応援席ハラスメントは、とくに集団スポーツで起きやすいです。
子どもたちが経験する機会の多いサッカー、野球、バスケットボール、バレーボールで分析を行ったところ、野球とバスケットボールで応援席ハラスメントが多いことがわかりました。
なかでも「バスケットボールが最多」との結果が出ましたが、理由は応援席と選手の物理的距離が近いからだと考えられます。
また、他者と過剰に比較する、ミスにこだわりすぎる、勝利至上主義などの根本的な考え方が応援を過熱させ、ネガティブな発言・態度につながりやすいと言えます。
ふだんは口に出さない言葉を、他の保護者の言動に影響されてつい言ってしまう方も含まれているでしょう。