実際の治療例からわかる意外な事実

年齢と妊娠率は相関するものの、AMH値と妊娠率はほとんど相関しないことがわかっていて、AMHの値が0に近い女性でも、妊娠・出産している例はあります。

 

不妊治療が可能な期間を予測する指標として、これをどう不妊治療に活かしていくかを考えたとき、「残っている卵胞数を予測し、限られた妊娠のチャンスをいかに有効に使うかを考えたほうがいい」と浅田先生は言います。

 

「40代後半でも卵巣予備能の数値がよく、妊娠に至った例はありますが、やはり年齢による染色体異常や流産率の高さは考えなくてはなりません。高齢でも妊娠は可能ですが、若いうちに妊娠したほうがさまざまなリスクが少ないことは間違いないですから」

 

以下は、浅田レディースクリニックで保険診療(保険適用で3割負担で受けられる治療)を行った例です。

 

■Aさん:29歳、AMH9.84
・保険採卵1回、保険移植2回で妊娠判定陽性
 

■Bさん:41歳、AMH0.71
・保険採卵4回、保険移植3回(受精卵が得られず胚移植中止1回あり)、3回目で妊娠判定陽性
 

■Cさん:32歳、AMH0.77
・保険採卵2回 保険移植3回 治療継続中

 

「Aさんは1度の採卵でかなりの数が取れ、凍結卵を移植してうまくいったケースです。BさんはAMH値が低く、採卵が難しかった。採卵できても受精卵が得られず、胚移植を中止したこともありましたが、最終的には妊娠に至りました。CさんはAMH値が低く採卵できる個数が少ないため、治療を継続しています」

 

ちなみに、保険診療内だと移植は6回まで(40歳未満の場合)。その先は自由診療(その人の体の状態に応じて適切な治療を臨機応変に行うもの。10割が自己負担となる)になるそう。

 

先生のコメントにもあるように、年齢が若くてAMHの数値が高いという条件が揃っていれば、確かに妊娠しやすいように見えます。

 

一方で、20代や30代前半と年齢が若いのに、AMHが低くなかなか妊娠できないケースもあるし、40代でAMHの数値が低いにもかかわらず妊娠に至る人も。「こうすれば妊娠する」と一概には言えないのが、不妊治療の難しいところなのです。