若年齢での「卵子凍結」は不妊治療の「転ばぬ先の杖」

不妊治療が進化しても、女性の社会進出が当たり前になっている現代では、その妊娠時期とライフスタイルの方向性を一致させるのは至難の業。そこで、次の一手として考えておきたいのが「卵子凍結」です。

 

「キャリアを重ねるなかで、妊娠する期間がなかなか取れない、という人は卵子を凍結する方法も有効です。最近は凍結法が変わってきて、安定的に卵子を凍結する技術が上がったことで、不妊治療の可能性が広がったと思います。

 

実際、現役続行中の女性アスリートが将来を見据えて卵子凍結を決断した、という例もありますよね。

 

2人目を望む人にもひとつの選択肢になります。不妊治療とキャリアの両立が保証されていかなければ、今後もライフスタイルの設計が難しくなる。ですから、こういう選択肢を選ぶ人がもっと増えてもいいと思います」

 

そのうえで大切なのは、必要な情報に的確にアクセスできる状況をつくることだと、浅田先生は続けます。

 

「医師と患者の信頼関係は大切ですが、それぞれのクリニックで治療スタンスが全然違います。ひとつのクリニックに長く通うことよりも、フットワーク軽くセカンドオピニオンを求める勇気がときには必要。冷静に客観視して判断できるドクターを選ぶことが大事だと思います」

 

昨年末、小池百合子都知事が、卵子凍結に関して都が支援を検討する方針を発表しました。キャリア女性が多い東京では、不妊治療との両立に悩む人も多いことから、助成などが決定すれば、不妊治療のハードルがさらに下がるかもしれません。

 

14人に1人が体外受精によって誕生している現代。背景には、女性の社会進出による晩婚化や性教育の遅れなど、さまざまな要因があります。治療レベルが飛躍的に向上し、保険適用が実現した今、すべての女性が正しい情報を得て、自身の人生を豊かにする選択をしていける社会になってほしいと思います。

 

PROFILE 浅田義正先生

浅田レディースクリニック 浅田義正先生

愛知・東京でクリニックを展開する「医療法人浅田レディースクリニック」理事長。開院以来、「浅田式」不妊治療を第一線で行い、日本でも有数の体外受精成功率を誇る。

 

取材・文/久保直子 参考/厚生労働省「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」