保険診療と自由診療、何が違うの?

「晩婚化の影響もあり、不妊治療をスタートする際、より高度な治療を求める人が多いのも現状」と浅田先生は言います。その場合は保険適用外の自由診療となり、やはり経済負担は大きくなります。

 

2人目不妊で治療を希望する声も増えています。1人目は自然妊娠だったため、治療を躊躇する人もいるでしょうし、経済的負担が大きいという現実がブレーキになっていることも課題となるでしょう。

 

「誰でも自由診療から、体外受精をやればいいというわけではありません。基本は検査や治療をして、その結果で判断していくべきです。

 

初めての方は、保険診療でベーシックな治療から始めるのはいいと思います。保険もステップアップ方式になっていますから。ただ年齢によって治療内容は変わるので、スピード感をもって治療を進めていくことが大事です」

 

保険診療を選択した場合、使用できる薬剤の種類や、1か月あたりの超音波検査(子宮内にある卵胞の大きさを測り、排卵日を予測するための検査)、血液中のホルモン検査の回数に制限があり、原則採卵後は同周期内に移植するなど、細かいルールが設定されたそう。

 

体外受精の最初のステップである「卵巣刺激」について、保険診療と自由診療でどれくらいの差が出るのか、比較してみました。

 

<保険診療の場合>
・エコー…採卵までの約2週間で3回ないし2回(エコー回数制限に伴い受診回数が決まる)
・薬剤使用例…保険で使用できる薬を選択。クロミッドを使用する場合は50mg/日。最大5日間使用したのちに採卵

※クロミッド=女性ホルモン様作用により脳下垂体からのホルモン分泌を促し、卵巣を刺激して排卵を促す薬。排卵障害に基づく不妊治療に用いられる

 

<浅田レディースクリニックでの自由診療の場合>
・エコー…排卵までの約2週間で5回程度
・薬剤使用例…患者の状態に合わせた薬を選択(たとえばクロミッドを使用する場合、100mg/日。制限なし)。卵胞の発育具合を受診ごとに確認し、成長が遅い場合は薬の調整を行い、最も良いタイミングで採卵

 

これはあくまで一例ですが、保険診療で行える回数や薬剤にも制限があることがわかります。自分にとって最適な不妊治療を受けるためには、信頼のおけるクリニック・先生に出会えるかどうかもカギになってくると言えそうです。

 

保険適用の制度はスタートしたばかり。そのなかで保険診療と自由診療のバランスなど、議論すべきところはまだまだありそうです。

 

PROFILE 浅田義正先生

浅田レディースクリニック 浅田義正先生

愛知・東京でクリニックを展開する「医療法人浅田レディースクリニック」理事長。開院以来、「浅田式」不妊治療を第一線で行い、日本でも有数の体外受精成功率を誇る。

 

取材・文/久保直子 参考/厚生労働省「不妊治療に関する取組」