「カレー作ってよ」そのひと言を子どもが言えたなら

── でも、ぼやぼやしていると受験に乗り遅れます。意思決定を子ども主体にして大丈夫なのか不安に思う保護者も多いでしょう。先回りしすぎないためには、どうすればよいのでしょうか。

 

藤後先生:まず、子どもがどんな問題に直面して困っているのか、そして、親に“何をしてほしいか、してほしくないか”を、子どもに聞いてみましょう。

 

勉強の内容が理解できないのか、受験校のレベルが高すぎるのか、友達に負けたくないのか、失敗するのが怖いのか、情報不足で不安なのか、時間の管理ができなくて困っているのかでも対処方法が異なります。

 

明確な理由がわからない場合もよくあります。受験を前にして「なんとなく不安」という子どもも多いです。

 

その場合も、親にどんなことを望むかを聞いて、話しあってはいかがでしょうか。

 

「大好きなハンバーグが食べたい」「横にいるだけでいいから、リビング学習につきあってほしい」など、直接、受験にかかわる以外にも親ができることが浮かんでくるはずです。

 

── 親が直接24時間サポートしなくても、子どもの力になれるんですね。でも、子どもが本人のためにならないことを言いだしたら困るなぁなんて... 。

 

藤後先生:でも、それは子どもの問題です。それに「本人のためにならない」というのは大人が勝手に決めていること。

 

子どもの権利条約31条でもうたわれていますが、本来子どもには、ぼーっとしたり休息する時間も必要です。

 

もし、子どもの希望が親としては受け入れがたい内容でも、「その選択をすると、後からでは間に合わない可能性があるから、相当追い込みかける必要があるよ」と、話し合えば済みます。

 

親からのアドバイスにより子どもが考えを変えるかもしれませんし、子どもの考えを尊重して後で子どもが困ったとしても、それは子ども自身の人生です。それに子どもが困ったとしても親と一緒に乗り越えることもまた貴重な経験です。

 

私も3人の子どもの受験につきあいました。大学受験までの間に合格も不合格も何度も味わいました。なにせ3人分なので回数はかさみます。

 

我が家の方針は、小さいころは遊び中心。その後も自由を尊重しながら、話しあいはしました。もちろん反抗されることもありましたが。現在、3人とも希望どおりの進路を選び、自分のやりたいことを追求しています。

 

── 家族との議論を経て自分自身で判断すれば、子ども自身の覚悟も決まりますよね。そんな子どもを見守るうえで、他に親ができることはありますか?

 

藤後先生:子どもへの期待や要求レベルに幅を持たせてください。たとえば、受験校選びです。

 

実力的に厳しい難関校を受験する場合、もし第一志望の学校がダメでも、この学校なら許容可能という併願校のラインを親子間で合意しておきましょう。

 

併願校に行っても、充実した学校生活を送ることができるイメージを親子ともに描ければ、気持ちに余裕をもって難関校に挑めます。

 

志望校選びは、子どもの考えを知り、将来について語り合う貴重な機会です。どんなときも、子どもの進路を親が勝手に決めるのはよくありません。受かっても受からなくても「親が決めたから」「親のせい」という感情は残ります。

 

多少思いどおりにならなくても次につながると子どもを信じましょう。