ゴミを拾えば拾うほど処理するお金が増える現実

宗像市の漁業組合のデータによれば、同市のアワビの漁獲量は10数年前の半分以下。その原因は、地球温暖化による海水温上昇や、乱獲などさまざまな理由があります。

 

また、海女の獲るウニやアワビなどの生存率にプラスチックごみがどのくらい直接関係するかはわかっていませんが、魚などはプラスチックを胃にため、成長阻害や死亡のリスクがあるといわれています。

 

漁師たちは、海にゴミが増えていることを肌で感じていました。実際、船のスクリューに海洋ゴミが巻き込まれ、故障する事故も増えています。

 

時間が経つほど細かく砕けて拾いきれないゴミになっていく

「少しでも環境をよくするためにいまできることをしたい」と、本田さんは権田さんたちと合流し、一緒にゴミを拾うようになりました。

 

とはいえ、海洋ゴミは一般的な家庭ゴミとして処分できません。処理費用が漁師の負担となり、拾えば拾うほど赤字に。

 

もっと負担なく、持続的に活動を続ける必要があると考え、本田さんたちは2021年7月から『一般社団法人シーソンズ』を立ち上げました。

 

ゴミをただ集めるだけでなく、時期によってゴミの量や種類の変化についてデータを取り、大学の研究室に提供する試みも。

 

また、海で拾ったプラスチックゴミをリサイクル工場に売却し、その収益を漁師に還元する仕組みも試行錯誤しながらつくっています。

 

若手漁師を中心に立ち上げた一般社団法人シーソンズのメンバー。海が荒れて漁に出られないときを中心にゴミ拾いする(一番右が本田さん)

「海で拾ったプラスチックは劣化しているのでリサイクルが難しいんです。でも、なんとか再生させ、“漁師の拾った再生プラスチック”として商品化し、収益を上げられないか考えています。

 

こうしたお話をすると“金儲けが目的なのか”と話す方もいらっしゃいます。でも、お金になるかどうかはとても大切です。

 

ボランティアをお願いするとしても、個人の善意に頼る形になり、限界があります。日々の生活が優先となり、継続的に続けるのは難しいんです。

 

私たちは海洋ゴミの回収を漁師の仕事のひとつとしてとらえ、長く活動したい。そのためには利益を出す必要があるんです」

 

一般社団法人化されたことで、活動内容が周囲にも伝わりやすくなりました。

 

小学校で海洋ゴミの授業をしたり、企業向けの講演を行ったりするなど、少しずつ本田さんたちの活動が周知されてきています。

 

こうした活動が宗像市だけでなく、日本各地で展開されてほしいと本田さんは話します。

 

「少しずつでも行動すれば、みんなの意識も変わってくる気がします。

 

実際、以前は“ゴミばっかり拾って遊んでいないで漁をしろ”と言っていた元海士のおじいちゃんも、あるとき、船に乗せてもらった際“お前、ゴミ拾ってるんだろ、あのゴミ拾わんか”と、海面に浮いているペットボトルの近くまでわざわざ船を寄せてくれました。すごくうれしかったです」