高まる女性エンジニアへの期待
── そもそも女性が工学部を目指そうとすると、保護者や学校の先生が反対する、という話を聞きます。
藤田さん:そうなんです。今でも理工系を目指す女子学生にとっては、保護者の考え方が最初のハードルになるという現実があります。
うちの工学部に入学した学生にも、保護者から猛反対されたという子がいます。「女には仕事はない」「男ばかりでのけ者にされるぞ」と。もちろん、それは人生の先輩として、良かれと思ってのアドバイスなのでしょうが…。
── 実際のところ、女性エンジニアへのニーズはあるのでしょうか。
藤田さん:実はめちゃくちゃ増えています(笑)。背景として、工学のあり方そのものが変化していることが挙げられます。
従来の工学は、ジェームス・ワットが蒸気機関を作ったところからスタートしました。牛馬をしのぐ力を求めるところから始まって、エンジンを開発し、機械を作ってきました。
どれだけ力が出せるか、どれだけ効率を上げるかを目指す20世紀までの工学を、私は「力と開発の工学」と呼んでいます。
ところが21世紀になると、情報工学など「知能の工学」が重視されるようになります。ソフトウェアが機械をコントロールするようになって、社会システムや生活のさまざまなところにまでプログラムが入りこむようになったのです。
持続可能な社会やよりよい生活は男性だけのものではないのに、それを実現するためのソフトウェアやハードウェアの作り手が、男性ばかりではやはりよくない。
ヒューマノイド型ロボットの権威である石黒浩先生によると、日本のロボットチームは男性ばかりで、女性が入っている海外のチームに劣る部分があるそうです。石黒先生は本学部で客員教授として指導することを引き受けてくださいましたが、背景にはそういったことへの危機感があるのだと思います。
これからの工学には、多様な視点や発想が必要で、多様な背景を持つエンジニアが求められています。とくにAIや情報工学分野で、女性エンジニアを求める流れはどんどん強くなっていくでしょう。