「女子に理工系の学問や仕事は向かない」そんな社会の思い込みなどから、これまで大学で理工系を選択する女性は、圧倒的に少数でした。そんななか、奈良女子大学は、昨年4月に女子大学として初めて、工学部を創設。その背景について、同大学工学部長の藤田盟児さんにお話をうかがいました。
少数派だからこそ「女子大がやること」に意味がある
── 奈良女子大学に工学部が創設された経緯を教えてください。
藤田さん:2018年ごろ、奈良女子大学が奈良教育大学と統合するのを機に、工学部をつくろうという話が持ち上がりました。
文部科学省は2023年度入試から、理工系学部に「女子枠」を設けるよう働きかけていますが、その前からの構想です。
── 内閣府の調査によると、令和3年度工学部入学者のうち女性は15.2%でした。工学部では女性は圧倒的に少数ですね。
藤田さん:工学部に限った話ではないですが、少数派は、多数派が気づかない苦労を常に抱えています。
価値観や生き方はどうしても男女で違いがあります。男性が圧倒的に多く無自覚なうちに優位になる環境で、工学を学んできた女性はやりにくさがあったと思います。
── 共学の工学部ではなく女子大で学ぶ意義はありますか。
藤田さん:伸び伸び学習できる環境であるということが、最大の意義だと考えています。
工学において、男性は強さやカッコよさを目指すのに対し、女性はSDGsや生活レベルで着眼する傾向があります。
後述しますが、これからの工学には、女性の視点が欠かせなくなってきています。にも関わらず、マイノリティの立場での学習環境では、女性は自分の工学に自信が持ちづらい。
奈良女子大学は、そもそも女性の社会的な活躍を確立するために生まれた大学。社会で活躍できる女性エンジニアを育てるためにも、女子大学での工学部設立には意義があると考えています。
共学で工学を学ぶ女性ももちろんたくさんいますが、女子大で男性に影響されずに自分の学びに自信をつけることは、社会に出てからも、苦難に立ち向かう糧になるはずです。