「家族が大事」つまずきながら毎日を過ごしている
── いまは、親のせいで理不尽な苦労をすることを“親ガチャ”とか、“毒親”と呼ぶ風潮があります。家庭環境で苦労したhitomiさんとしては、どんなふうにとらえていますか?
hitomiさん:今風にいえば、そういう呼ばれ方をするのかもしれませんね。当時は、親に対して「嫌だな」という気持ちはなかったのですが、一度だけ怒りを覚えたことがありました。
私が18歳くらいのころ、母と会ったときに兄に対して、「なんであの子は、あんなふうになっちゃったんだろうね」と言っていて、「じゃあ、あなたは、私たちたちのために何をしてくれたのか?」という思いが芽生えたんです。
親が子どもの面倒をきちんとみて、一緒に向き合う時間を過ごしてこそ、感謝の気持ちが湧くものだと思うんです。親は親なりの理由があったにせよ、それについては理不尽さを感じました。
「あなただって、花にちゃんと水をあげていたの?」という感覚がありましたね。
── たしかに、子育てと植物の栽培は似ていますよね。畑を耕し、水をやり、ときには肥料も与えながら、手間ひまかけてようやく育つ。
hitomiさん:そうなんですよね。それを飛び越えて、勝手に立派に育つものなんて、虫が良すぎるんじゃない?と、理不尽な思いにかられました。
── そうした思いは、自分の子育てにも生かされていますか?
hitomiさん:幼少期の経験から、親と一緒にご飯を食べたり、笑って過ごすような温かい家庭に対する憧れがあって、「家族との時間をなによりも大切にしたい」気持ちは強いですね。
ただ、私自身が親に甘えたり、相談したりといった経験があまりなかったので、「こんなときはどうしたらいいのだろう」という悩みに直面することも多く、つまずきながら一歩一歩進んでいるという感じです。
「家族のつながり」は私にとって人生のテーマ。子どもにとって、「家族で一緒に過ごす時間が幸せ」と感じてもらえるといいなと思いますが、自分の幼少期が複雑だったのでずっと手探りのまま頑張っています。
PROFILE hitomiさん
1976年生まれ。1994年に18歳でCDデビューし、「CANDY GIRL」や「LOVE 2000」など多数のヒット曲を生む。38歳で現在のご主人と再々婚。2020年7月に44歳で第4子を出産。現在、14歳の長女、8歳、6歳、2歳の男の子のママとして日々奮闘中。2023年1月22日(横浜)に単独ライブ「hitomi Billboard Live 2023 "With Love"」を開催。
取材・文/西尾英子 画像提供/Avex