「夜10時に呼び出されたら」なんと座長への昇進
── 新喜劇に入って10年目の2017年、30歳で女性初の座長に就任されましたが、知ったときはどんな心境でしたか?
酒井さん:
夜10時くらいに吉本興業の幹部の方に呼び出されたので「怒られるんちゃうか?」と、ビクビクしながら行ったら、想像もしてなかった“座長昇進”を言い渡されました。
呆然として部屋を出たら、カメラで撮影されていて、その場で実家に電話することになりました。
うちの両親は9時には寝る人たちなのに(笑)、夜11時くらいに電話したんですよ。
新喜劇に入ることを最後まで大反対した両親は、「びっくりして目が覚めたわ。ほんまに大丈夫なんか?」と驚いていました。
その直後に報告した小籔兄さん(当時座長だった小籔千豊さん)に冷静なアドバイスを受けて我に返り、気合いを入れ直しました。
── 予想外とはいえ、酒井さんなら座長が務まると吉本興業は判断したわけですよね。座長は看板としての役割もありますが、実際にどんなことを任されるのですか?
酒井さん:
座長はゼロのところから芝居に関わっていくので責任重大です。今回は学校を舞台にしたスポ根ものにしよう、いや遊園地で恋愛ものにしようなど、場面設定から作家さんと相談します。
さらにストーリー作り、座員のキャスティング・予定調整、大道具さんとの打ち合わせ、稽古も主導します。
マンネリ化は絶対にイヤなので、新しい感覚や時代を感じられる展開を意識しています。
現在、私を含めて3人の座長がいて、1作品につき、なんばグランド花月と京都の祇園花月で各1週間ずつ公演します。1作品の準備期間は1か月半程度です。
── 1か月半で新作を作り上げるなんて相当パワーが必要ですね。大ベテランの先輩たちに指示を出す場面もあるはずですが、やりにくくないですか?
酒井さん:
ベテランの先輩たち自身が、私が意見を言いやすい雰囲気を作ってくれます。“やりたいことやってや”という感じで。
座長経験者で芸歴56年の池乃めだか師匠でさえ、「今日の芝居のニュアンス、あれで良かった?藍ちゃんのイメージにあってるか?」と聞いてくれます。
年齢や芸歴に開きがあっても、プロ同士リスペクトを持って接してくれるのでありがたいです。