1990年代初め、ソバージュヘアにボディコンとバブル時代を象徴する女性として活躍していた千堂あきほさん(53)。あまりの多忙と重圧で自分を見失いそうになりますが、妹さんからかけられた言葉に心が軽くなったそうです(全3回中の2回)。
スタントマンになりたい!
── 千堂さんは、もともと芸能界には興味がなかったそうですね。
千堂さん:そうなんです。10代のころは、幼児教育に関わる仕事か、運動が得意なのでスポーツの競技者になりたいと思ってました。
でもそう言えば、中学のころ、志穂美悦子さんに憧れて「スタントマンになりたい!」と、JAC(当時)養成所のオーディションを受けたことがあるんです。
姉に付き添ってもらい京都まで行き2次審査で、憧れの志穂美さんの前で質疑応答をして。
なんと合格したんですけど、入学金が高くてあきらめました。
何となくオーディションを受けたら…
── もったいない!そこからどういった流れで芸能界に?
千堂さん:高校進学の年に宝塚北高校の演劇科が新設されて、担任の先生の推薦で入学したんですね。
演出や身体表現も学べると聞いて、そういったことも教えてあげられる幼稚園の先生になれるかな、と思ったからなんですけど。
周りに女優を目指す子がたくさんいたので、その影響で高3の夏休みに何となくオーディションを受けたら、それがきっかけでスカウトされました。
── 芸能の仕事をやってみたいという気持ちが、どこかにずっとあったんでしょうか?
千堂さん:というより、芸能界に入りたい人がこれだけいるということは、そこでしかできない貴重な経験ができるのかもしれないと考えたんです。
親とも相談して、2年だけやって、芽が出なかったら短大を受ければいいと思って芸能活動を始めました。
父親からの教えを守っている
── 高校生とは思えない冷静さですね。
千堂さん:たぶん父がそうだったからだと思います。
「これは就職なんだから、親は何も口出ししないよ」と言われて、本当に仕事について何も言ってこなかった。
「年相応の学びをしていかないと芸能人は旬があるから、それが終わったときに戻れなくなるからね」とも言われて、ずっと心のどこかにありました。
その2年間、東京ローカルの仕事はやっていましたが、なかなか軌道に乗らなくて。
所属事務所の事務仕事を毎日コツコツやって、やっぱりダメだと思っていたら、次の年に『オールナイトフジ』の司会や『東京ラブストーリー』の仕事が決まって、生活が一変したんです。
“千堂あきほ”は職業
── 華やかな美貌にボディコン・ソバージュがよく似合っていて、大人気でした。テレビや雑誌でみない日はなかったです。
千堂さん:当時はどこにいても“千堂あきほ”でいなくてはいけない。
こんなことを言ってはいけないという規制もあり、いつもきちんしてなくてはという意識があり、すごく気を張っていたと思います。
1日に10社くらい取材を受けて、どこでどんなことを話したかわからなくもなりました。
どこに行っても自分だとバレて、みんなが自分を見ているとか、こんなふうに書かれているとか、しんどい時期もありました。
でも、だんだん「仕事が“千堂あきほ”なだけだけなんだ」と割りきれるようになりましたね。
社会人として恥ずかしい
── 何かきっかけがあったんですか?
千堂さん:歌手デビューする少し前に、私が芸能人ということで、4つ下の妹がいじめられていたらイヤだなと思ったことがあって。
「学校でからかわれたりしない?」と聞いたんです。そうしたら「ぜんぜん。仕事が“千堂あきほ”なだけでしょ」と平然とした答えで。そうか、だったら私も割りきればいいんだって。
その言葉を心に落とし込めるまでは時間がかかりましたけど、何かあると思い出して言い聞かせていましたね。
── しっかりした妹さんですね。返ってきた言葉のひとつひとつを大切に受け止めている千堂さんも素晴らしいです。
千堂さん:家族の言葉は、本当に支えになっていますね。忙しくなってからも父に言われた「年相応の学び」はずっと意識していました。
芸能人だからといって、自分で切符を購入して電車に乗ることもできないなんて、社会人として恥ずかしいですからね。
友達とは駅で待ち合わせをして電車で遊びに行き、食事もみんなでワリカンにして。
普段は贅沢しないように、財布に入れるお金をいつも同じ額にしてました。
だけど、“千堂あきほ”は夢を持ってもらう仕事だから、ちゃんとお金を使ってあげる。
化粧品もプライベートと仕事で使い分けてました。
そうやって普段の自分の考えや価値観を持つことで、“千堂あきほ”を演じることも楽しめるようになったんです。
PROFILE 千堂あきほさん
1969年、兵庫県生まれ。’90年に歌手デビュー後、『東京ラブストーリー』などのドラマやCMに幅広く出演。2000年に結婚し、’11年から北海道に移住。北海道漁協女性部応援大使。HTBドラマ『弁当屋さんのおもてなし』(’23年2月)では声の出演。
取材・文/原田早知 写真提供/千堂あきほ