餅は「当たり前にそこにあるもの」
また、こんな調子なので、わが家では「正月に余った餅を消費するレシピ」のようなものがそもそも存在しません。
餅はいつもそこにあり、当たり前のように食べるものだからです。
しかしたまには変わった食べ方をしたいな…と思うことも稀にはあるので、そんなときはフライパンに餃子の皮を敷き詰め、その上に餅を並べ、ピザソースや野菜、ベーコンなど好きな具材をのせて蒸し焼きにした「餅ピザ」を作ったりします。
これはわが家でも人気のメニューで、義父母も年齢からは信じられないほどの食欲を見せ、直径25cmほどのボリュームたっぷりの餅ピザが、あっという間に家族の胃袋に消えていきます。
老いは自覚しにくいものだから
そんなわが家ですが、考えてみれば義父母もすっかり後期高齢者。柔らかい餅は喉に詰まる可能性があるので危険なお年頃です。
窒息事故のニュースも毎年報じられているし、そろそろ安全のために、お餅を小さく切るようにしましょうか?と、義母に提案してみたのですが…。
「詰まったらそのときは寿命だと思うことにしましょう」と義母。
そんなに大きい餅が食べたいのか…命と引き換えにしてまで…?
義母の餅への情熱はよくわかりましたが、しかし自分の老いは自覚しにくいもの。ここは私たち家族が気をつけていくしかありません。
そこで今年の正月は一計を案じ、パックになった切り餅ではなく、大きな1枚ののし餅を買うことにしました。
義母は「のし餅は食べきれなくてカビが生えちゃいそうだから嫌よ」とずっと切り餅派だったのですが、いやいや、考えてみればわが家の消費ペース、特に正月の餅の消費量を考えれば、のし餅の1枚や2枚、余裕です。
そうして切り分けるときに、切り餅よりも細かく切ってしまえばこっちのものです。
さらに喉に詰まりにくいように、雑煮などにも焼いてから入れればいいか…と算段していますが、さて上手くいきますかどうか。
無事に今年も家族で美味しく餅を食べられますように。
正月明けの体重計の数字を想像するのは、今はやめておきましょう…。
文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ