「人生からの撤退」は絶対にさせてはいけない
ご相談者様がもしも「受験日をゴール」だと捉えているようであれば、その考え方は捨ててください。そうでないと、学習の伴走をするなかでお子さんの学習への意欲が出てきたときに、「1年前から一緒に取り組んであげればよかった」と後悔する気持ちが浮かんでくるでしょう。
しかし、今から動き出して少しずつ学習に取り組めるようになれば、中学以降、どんどん力を伸ばすことができます。さらにその状態を継続できれば、高校3年生の時点で「あのとき投げ出さずによかった」と思うはずです。未来の18歳の姿は今からいくらでも変えていけるんです。長期的な視野で、足元の学習習慣をつくり直してあげましょう。
これは、いわゆる「中受撤退」を勧めているわけではありません。中学受験は単なる選択肢ですので、予定通り受験するのか、やめるのかはどちらでもよいと思います。
ただ、やめるにしても投げ出す形になってしまうと、「学んで成長していく自分」からも撤退させてしまうことになります。学習の目標設定を修正するという冷静な判断として選択することが重要であり、お子さんを人生から撤退させるようなことは絶対にあってはなりません。
ご相談者様の場合は、勉強は死ぬまで続くという冷静な視点に立ち、今はお子さんが学習に意欲を持てるようサポートしていくことが大事です。
そのためにはお子さんではなく、ご相談者様自身の意識変革が重要になります。これまでお子さんに投げかけた言動を振り返り、状況によっては親子の信頼関係をつくり直すところから取り組まなければいけないかもしれません。その勇気があるかどうかが、今後のカギになると思います。
PROFILE 小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。
取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!