中学受験を控えているご家庭は、追い込みの時期かと思いますが、今回のご相談者様のお子さんは、まったく勉強に身が入らないようです。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生が、今取り組むべきことについて助言します。
【Q】受験直前なのに脱線する子。どうしたら…
中学受験生の息子。本番まであと少ししかないにもかかわらず、お尻に火がつきません。暇を見つけては動画配信を見たり、ゲームをするので、「家にいさせては良くない」と思い、毎日自習室に行かせるようにしました。しかし、先日の模試の結果はクラスで最下位。自習室ではどうやら寝ているようです。家では遊び、自習室では寝る、本気度をまったく感じられない息子。やる気の引き出し方を教えてください。
子の傷になる言葉「間に合わない」を捨てること
中学受験をするのは、お子さんです。お子さん自身の「受験勉強に取り組む理由」は何でしょうか。そこを共有できていないのであれば、まずはお子さんに「どうして中学受験をしたいのか」、本人の正直な心の内を教えてもらう必要があります。
「受験すると決めたから」「この学校に行きたいから」など、お子さんなりの理由が聞けた場合は、もう一歩踏み込んで「なぜ受験を予定している学校に行きたいの」と聞いてみましょう。入学後にどんな生活やどんな学びを期待しているのか、どんな友人関係を築きたいのかということを問うのです。
そういった本人にとっての「リアル」がなければ、受験学習へのやる気が起きてこないのも当然です。もし、そうした期待感や欲求がお子さんの口から出てこないのだとしたら、今話し合うべきは勉強をする・しないではなく、本人に頑張る理由を持たせてあげることです。
仮に、お子さん自身が中学受験を明確に望んでいるにもかかわらず、寝たり遊んだりしている場合は、自分の学習に対して諦めがあったり、自信を失っている可能性が考えられます。勉強してもわからない、あるいは勉強をなかなか継続できず自分はダメだと思ってしまっているのかもしれません。
いずれにせよ、勉強に向き合えるイメージがわいていない状態にあるので、ご相談者様は言い聞かせたり叱ったりするのではなく、安心感を渡しながら実際に行動できた事実を生み出すために、一緒に学習に取り組んであげる必要があります。
「ここまで取り組めたね」「この漢字を覚えられたね」と声をかけ、「できたという事実」をつくってあげて、お子さんの意欲を高める応援をしなければいけません。
そんなことをしていたら中学受験に間に合わないと思うかもしれませんが、一歩目を踏み出さない限り、学習は動かないんです。まずはお子さんが学べる状態に立て直してあげること。今はそれを大事にしてください。
ご相談者様に強く勧めたいのは、「間に合わない」という言葉を捨てることです。実は、中学受験に参加した結果、後々の子どもの人生に悪影響を及ぼしてしまう親御さんには、共通点があります。それは、「間に合わない」という言葉をよく使う点なんです。
たしかに中学受験は家族にとって一大事業です。精神的に追い詰められて視野が狭くなってしまうのはよく分かります。
しかし、落ち着いて考えてみてください。中学受験は、しょせん入試当日にどれだけ問題が解けるようになるかという話。お子さんの人生を決めるようなものではありません。
入試日までに必要な学習が間に合わなかったとしても、お子さんのこれからに取り返しがつかないなんてことはありません。
受験が終わっても人生は続くということは忘れてはいけません。
親御さんが12歳で人生が終わるかのような思考回路になってしまうと、中学受験は子どもの心の傷としてその後にも悪影響をおよぼしやすいので注意が必要です。