首都圏を中心に、小学校受験をするご家庭が増えています。今回の相談者もその一人。教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生が、小学校受験の現状や注意点とともにアドバイスします。

 

「小学校受験『自己肯定感』を大事にしたい親が知るべき深刻なリスク」P1
「小学校受験『自己肯定感』を大事にしたい親が知るべき深刻なリスク」P1

【Q】苦手なことをできるように導くのが大変

小学校受験の本番は10月なので、受験組の新学期のスタートは11月です。我が子はいま年中ですが、来年の小学校受験に向けて、いよいよ本番を迎える受験年になりました。息子は、元気でやんちゃな子です。お教室でやっている内容は、得意なこともありますが、苦手なこともあります。

 

たとえば「数を数える」「絵を描く」というのがとても苦手。本人は得意なことばかりやりたがりますが、「数」も「絵」も小学校に上がってからもやるので「やらなくていいよ」とは言えません。しかし、やらせるためにはとても苦労があり、親の根気が必要です。

 

本人の自己肯定感を傷つけないようにしながらも上手に取り組ませるにはどうしたら良いのでしょうか。

「自己肯定感を否定するアプローチ」の自覚を

少々厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、大事な話なのであえてお伝えしますね。

 

小学校受験は毒にも薬にもなりうる取り組みですが、大半は毒になっているのが現状です。なぜなら「できる・できない」という全くナンセンスな発想で子どもを見ているお受験教室が、多すぎるからです。

 

小学校受験専門の教室がすべてそういう指導をしているわけではありません。子どもの本質を踏まえた指導ができている立派な先生もちゃんといらっしゃいます。しかし、子どもの発達心理を理解せず、表面的な訓練に終止するだけの、わかってない「先生」が決して少数派ではないのです。これは、日本の子育てや教育における深刻な課題だと感じています。

 

そもそも、子どもの興味関心がさまざまであるなかで、万遍なくできるようにさせるアプローチをとりがちなのが、小学校受験の世界です。「あれもこれもやりなさい=あれもこれもできていないからやりなさい」ということ。

 

一歩間違えば、子どもが個々に持っている伸びしろや興味、自己肯定感を全否定し続けながら、作り変えようとすることにもなりかねない。そういった怖さをわかったうえで、取り組まなければいけません。自己肯定感を大事にしたいなら、なおさら自覚していただきたいです。

 

お子さんは、まだ4歳。ご相談者さまは、数を数えることや絵を描くことを「とても苦手」と決めつけていますが、お子さんにはほかにやりたいことがあるのでしょう。

 

動くのが好きなお子さんのようですので、「グランドのはじからはじまで何歩でいけるか数えてみよう」と一緒に並んで歩いてみる。あるいは、ストップウォッチを使って「目をつぶって10秒のところで止めるゲーム」なども、乗ってくるかもしれません。

 

生活の中にすでに数はありますよね。それを教えてあげて、お子さんが楽しみたい形で触れさせてあげれば、数えられるようになるはずです。

 

絵も、形に関心を示す子、色に興味を持つ子、絵を使ってごっこ遊びをしたい子など、興味関心の入り口はさまざまです。猫を描くのはいやでも、ロボットや電車なら描きたい子もいますし、自分の顔を描いてもらうことがうれしい子もいます。お子さんにとって絵がどういうものかをつかみ、アプローチしていけばよいと思います。

 

「絵を描く」も「数を数える」も、本来は理解が広がったり世界の見え方が変わったりするおもしろい行為です。まずは、お子さんが何に興味があり、どんなことを頑張る子なのかといった個性を見て、それを生かす形で取り組んでください。

 

学校選びも同じです。万遍なくできる子にきてほしい学校を選ぶのか、そうでないのか。お子さんが入学後に楽しく過ごせそうかという、相性を考えて選ぶのが良いでしょう。