お子さんの通う保育園や幼稚園で、冬になると「フリースや裏起毛の服を着せないでください」というお知らせをもらったことはありませんか?冷え込む冬の朝、「フリースどころか裏起毛もダメなんて…」「風邪を引きそう」と心配になってしまう人もいるかもしれません。今回は、なぜ裏起毛の服を着せないように言われるのか、実際にお子さんが保育園に通うママの体験談も参考に解説します。
「裏起毛」とはどんな素材?「裏毛」との違いは
まずは、「裏起毛(うらきもう)」とはどんな素材の服なのかを確認しておきましょう。
裏起毛は、トレーナーやパーカー・カジュアルなパンツなどのスウェット生地によく見られます。
2層になっているスウェット生地の裏面(肌に触れる側)の繊維を機械で起こし、カットして揃えたのが「裏起毛」の状態です。
ふわふわとした肌触りや、身体から出たあたたかい空気を含む性質があるため、秋冬の寒い時期によく出回る素材です。
一方、よく似た名前の「裏毛(うらけ)」は、裏側の糸がカットされておらず、タオルのようなループ状になっています。春夏によく着るパーカー類の裏地を思い浮かべれば分かりやすいのではないでしょうか。
素材を比較してみると、裏毛の生地は綿(コットン)100%が多いのに比べ、裏起毛のふわふわとした質感を出すには綿だけでは難しいのか、ポリエステルなどの化繊素材が多く使われます。
裏起毛の子供服は気温何度からが最適なのか
裏起毛のアイテムを着るのに適した気温は何度くらい?と疑問を持つママ・パパもいるのではないかと思い調べてみましたが、地域差や個人の体感温度の違いなどもあってか公式に「(気温)何度以下が適切である」というデータは見つかりませんでした。
しかし、店頭で売られている子供服の品揃えから考えると、本州ではだいたい11月頃~3月頃までが裏起毛の服に適した時期だといえるでしょう。
裏起毛の服を着て「温かくて快適」と感じるのはデスクワーク中心の大人、特に筋肉量が少なく冷えを感じやすい女性が多いと思われます。
赤ちゃんや幼児は一般的に「大人よりも1枚少なく着せるとちょうどよい」と言われることからも分かるように、同じ気温でも大人よりも早く体温が上がります。
全力でよく動く幼児や体温調節機能が未熟な赤ちゃんは、大人と同じ素材の服では暑すぎることも多いのです。
保育園では完全禁止も。ママの声と対策
多くの子供たちが同じ環境で過ごす保育園では、服装についても、安全のため首回りに紐やフードがないもの、スカートは禁止などさまざまな指定があります。
それらのルールのひとつとして「裏起毛の服は着せないでください」といわれることも。
大人にとっては、「真冬に裏起毛までダメなの?寒すぎてかわいそう」と感じるかもしれません。
しかし、お子さん3人が保育園に通っているママのMさんは次のように話します。
「朝、子供が指定の綿100%の服を寒いからイヤだと言って着替えてくれないんです。仕事に遅れてしまうので、保育士さんに事情を話して裏起毛のものを着せていったのですが、お迎えに行くとたいてい長袖Tシャツ1枚かその上に薄いスモック程度の日ばかりでした。寒いのは本当に少しの間だけみたいです」
またMさんはこんな工夫もしているといいます。
「保育士さんのアドバイスで、着替える前にトレーナーをこたつに入れて温めておくと文句を言わずに着ることが増えたのでおすすめですよ」
お子さん2人が保育園に通うEさんもこんな体験をしたそう。
「うちの子の通う園ではしっかりとエアコンなどの暖房が入っている上に、床暖房を完備しています。去年、お迎え時に大きな荷物を抱えて子供を追いかけていたら、ニットを着ている私も汗びっしょりになってしまい…子供も裏起毛はきっと暑いだろうと思いましたね」(3歳児と1歳児のママ)
真冬、登園時にはたしかに寒いかもしれませんが、園内で遊び始めるとすぐに暑くなってしまうため裏起毛の服は脱いだり着替えたりすることが多いようです。
子供が「暑い」と感じたら服を脱いで体温調節ができるようになるのはおよそ2歳後半頃からと言われています。
体温調節機能がしっかりと働くためには、年間を通じ、体温が上がったら汗をかいたほうがよいといわれます。しかし冬場はその汗がきちんと吸収・発散されないままでいると、急激に身体が冷えてしまい風邪の原因になることも。
化学繊維がメインの裏起毛素材は、汗を吸収しにくく内側が濡れた状態になりやすいため、冬の保育園や幼稚園での活動には不向きだというのが、園から禁止される理由なのですね。
家庭でも、子供がフリースや裏起毛の服を着ているとき、背中に手を入れてみてしっとり汗ばんでいたら、もう少し吸水吸湿性の高い素材に着替えさせてあげる必要があります。
おわりに
大人にとっては保温性が高くふんわりとした裏起毛の洋服はありがたいですよね。
でも、よく動く子供たちにとっては、体温が上がって汗をかいても吸湿しにくく、その後は身体が冷えてしまうというデメリットもあります。
寒い日も、できるだけ吸湿性のあるアイテムの重ね着でこまめに体温調節し、会話ができる年頃になれば「寒くなったら教えてね」と伝えて様子を見るようにするのが良さそうですね。
文/高谷みえこ