大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に長沼宗政役で出演している清水伸さん。作中で見せた情けない表情で「ニトリのCMの人だ!」と気づく人が続出。本人も「やっと気づいてくれましたね」とツイートし話題になりました。清水さんに本作出演で感じたこと、多数登場する個性の強いキャラクターのなかで、共感する人物について教えてもらいました(全4回中の3回)。

単体だったらここまで盛り上がらなかった

──「ニトリのCMの人」×「鎌倉殿の13人」という組み合わせはインパクトがありました。

 

清水さん:
そうですね。先日、俳優仲間とも話していたのですが、ニトリのCMは8年前からやっているので、もう少しの世の中の評価が上がってくれないかな、なんて思ってはいました。

 

でも今回の反響で、世の中が反応するにはひとつの要素だけではなく、それ以上ないとダメなんだということに気づかされました。

 

ニトリのCMの人が長沼宗政をやることでザワついてくださった。これが単体だったらここまで盛りあがらなかったのかなと思うと、やっぱり組み合わせ、タイミングって大事なんだなと。ちょうど新しいシリーズのCMが流れ始めた時期でしたから。

 

CMで8年サラリーマンの悲哀を演じる清水さん

三谷幸喜さんの“好きなタイプ”がうれしくて

──『鎌倉殿の13人』で見せた市原隼人さん演じる八田殿とのやりとり、サイコーでした。

 

清水さん:
おっちょこちょいな役じゃないと気づいてもらえないんだって思いました(笑)。

 

僕、結構いろいろな役をやっているんです。刑事役や今回の大河ドラマのようなお侍さん、お父さん役もたくさんやっています。

 

自分の演じた役を誰か褒めてくれないかなと思ってエゴサをするのですが、僕の感覚ですけれど8割の方はニトリのサラリーマンと同じ人だと気づいていないようです。

 

『鎌倉殿の13人』も36話から登場しているのに、話題になったのは41話ですから。そのあいだ、僕だと気づいてもらえませんでした。

 

プロデューサーさんが僕にこの役をやらせたいと脚本の三谷(幸喜)さんにキャスティング予定を伝えたら「あのCM知ってます。僕の好きなタイプの俳優さんだと思うので、ぜひ」と言ってくださったそうなんです。

 

── それはうれしい反応ですね。

 

清水さん:
長沼宗政が口に隠した起請文を戻そうとするけれど、なかなか吐き出せなくて困っているというシーンは、三谷さんが僕をイメージして書いてくださったのかなと、勝手に想像して台本を読みました。

 

時代劇で甲冑に身を包む清水さん

── 三谷さんとお話しする機会はあったのでしょうか?

 

清水さん:
残念ながら、お話はできていません。脚本制作も最終回前ということでとても忙しい時期でしたし、あれだけのキャラクターが出てくるなかで、長沼宗政に深く関わっている時間はなかったかと…。

 

── 人気キャラの八田殿との絡みがある、重要な役どころです。

 

清水さん:
ありがとうございます。三谷さんが「好きなタイプ」とおっしゃっていただいたというのを聞いただけでも、すごくうれしいです。

エゴサーチの結果はおおむね好評

── 先ほどエゴサーチのお話も出ていましたが、SNSやネットは結構チェックしますか?

 

清水さん:
見ます。人に評価されたくて表現の仕事をしているという部分もあるので、人がどう思っているか気にならないわけがない。

 

「おもしろかった」「感動した」「よかった」などの褒め言葉は、この仕事に限らずやっぱりうれしいことだと思うんです。承認欲求まではいかないけれど、やっぱり褒められたいですしね(笑)。

 

でも、エゴサの場合は「欲しい」と思っているものではない文言も引っかかってくるので、難しいなと感じる部分も正直あります。

 

── 清水さんはあまりネガティブなことを書かれるタイプじゃないと、勝手に思っていますが。

 

清水さん:
ありがたいことに、概ねおかしみを持って反応してくださっている印象があります。初登場回で気づいてもらえなかった残念さはありますが、間を置いて評判になったのはすごくうれしかったです。

「いい人でありたい」時政パパを自分に投影

── ちょっと情けない役にシンパシーを感じるというお話もありましたが『鎌倉殿の13人』のなかで共感したキャラクターは誰ですか?

 

清水さん:
坂東彌十郎さん演じる(北条)時政パパです。時政パパは決して悪い人じゃないと思うんです。人が良すぎるために、周りに担ぎ上げられて権力者になってしまい、関わる人たちを動かした結果、追い出されてしまった人。

 

僕だけじゃなく、多くの人がシンパシーを感じたと思うんです。

 

時政パパのようにいい人でありたいと思うけれど、それって周りにいいように祭り上げられて利用されているんじゃないか、自分はそうなっていないかって。つい、自分に投影してしまいました。

 

おっちょこちょい系でいうと西本(たける)さんが演じた北条朝時も好きです。母親がのえ(北条義時第三の妻)さんにいい加減に育てられているせいか、ちょっと教養のない感じもあって。

 

「ダメだけど、でも憎めない」というキャラクターにシンパシーを感じます。

 

PROFILE 清水 伸さん

俳優。1972年生まれ、新潟県出身。2022年の出演作は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』やドラマ『恋愛ディソナンス』、『ユーチューバーに娘はやらん』など。2015年よりニトリのCMに出演。劇団ふくふくやにて副座長を務めている。

 

取材・文/タナカシノブ 画像提供/清水伸、ニトリ