日本のお正月に似ているクリスマス
── 日本ではクリスマスは家族、恋人、友人など、人それぞれに一緒に過ごす方が違います。
木村さん:
ヨーロッパでは基本、クリスマスは家族で過ごすものです。日本のお正月をイメージしていただけたらわかりやすいと思います。フィンランドの知人が年末年始にうちに来ることもあるのですが、彼らは「日本の大晦日と元日は、クリスマスイブとクリスマスと似ているよね」と口々に言います。
クリスマスは家族で過ごすのが一般的ですが、クリスマス前のアドベント期間には、ピックヨウル(小さいクリスマス)と呼ばれるものを開いて、職場の同僚や友人と忘年会のようなものを楽しんでいます。
日本ではクリスマス当日も働いて、夜にクリスマスディナーを食べてお祝いをして、次の日もまた仕事に行くというのも一般的ですが、ヨーロッパではまず考えられません。
── 日本の大晦日と元日に当てはめると、分かるような気もします。
木村さん:
クリスマスを楽しもうと、そのタイミングでフィンランドに行く方もいるのですが、クリスマス当日はどのお店も閉まっているので気をつけてくださいとお話ししています。年末年始については、以前は閉まっていましたが、今はデパートなど開いている場合があります。
フィンランドではアドベントの期間にレストランもクリスマスの特別メニューが出ますので、訪れる際はクリスマス当日より前の時期のほうが楽しめますね。
── クリスマスプレゼントの習慣は日本と同じなのでしょうか。
木村さん:
実は、北欧ではサンタクロースは怖いお面を被って各家庭を回っているものでした。年神様のような、ナマハゲのようなものがルーツです。各家庭を回って「1年間、いい子にしていたか?」と聞くんです。
子どもたちは怖くて机の下に隠れたりしていたそうです。この風習は現地でも知らない方もいるのですが、それでいい子にしていたらプレゼントがもらえるというのが元々のコンセプトでした。
フィンランドでは今もサンタクロースのことをヨウルプッキ(クリスマスのヤギ)と呼ぶのですが、ヤギのツノが生えているお面つけていたのが由来です。
プレゼントは、日本のように恋人同士で渡すこともありますし、近所の人とチョコレートなどを贈り合うこともあります。ヨーロッパではクリスマスの時期がチョコレートのハイシーズンです。
── 日本の子どもたちはこの時期、サンタクロースがプレゼントを持って来てくれるか、ソワソワしていると思います。フィンランドの子どもたちはいかがですか。
木村さん:
フィンランドの子どもたちにとってサンタクロースは、直接見られる、会える人という存在です。サンタクロースは元々、コルヴァトゥントゥリ(耳の山)という山に住んでいるのですが、ラップランドの首都、ロヴァニエミのサンタクロース村にオフィスを構えていまして、ここでは1年中サンタクロースに会うことができます。
サンタクロースは1年かけてトゥントゥという小人と一緒に世界中の子どもたちのプレゼントを用意したり、トナカイの訓練をしたりして過ごし、クリスマスの晩には8頭のトナカイと一緒に飛び立ちます。
クリスマスの時期になると、ロヴァニエミにはヨーロッパ各地から直行便が飛びます。サンタクロース村ではサンタクロースにも会えるのですが、私も子どもと一緒に行ったことがあります。飛行機のなかでもクリスマスソングが流れていて、航空会社からプレゼントもいただけて、とても賑やかな雰囲気でした。
子どもたちは、クリスマスツリーの下に置かれたプレゼントを開けることもあれば、フィンランドの場合、玄関を開けたらサンタクロースがきて直接手渡してくれることもあります。文化は違っても、クリスマスを楽しみにする気持ちは世界共通です。皆さんにも思い思いの過ごし方でクリスマスを楽しんでいただけたらと思っています。
PROFILE 木村正裕さん
駐日フィンランド大使館 商務部上席商務官。フィンランドの介護、産業振興に関する活動を担当。また、クリスマス文化研究家として講演活動やクリスマスイベントのコーディネーションなども行う。2020年フィンランド共和国大統領よりフィンランド獅子ナイト勲章を受勲、ナイトの称号を授与される。
取材・文/内橋明日香 写真提供/木村正裕