全部がADHDのせいじゃない
── 診断を受ける前と後で、親としての気持ちに変化はありましたか。
森中さん:
長男が幼い頃は、「うちの子、天才じゃない?」って思ってたんですよ。言葉も早いし、得意なこともたくさんあって。
なのに診断を受けた直後は、長男のすべてを「あれもこれもADHDのせいだから」と見てしまう時期がしばらくありました。長男のちょっとした表情や行動、好きなこと、趣味嗜好、すべてがADHDのせいという思考回路になっていました。
でもそこから時間が過ぎて、私自身もADHDについて猛勉強した今では、結局、診断がついてもつかなくても、息子は何も変わらないんだな、と気づくことができました。今は彼がADHDかどうかは本当にどうでもよくて、たんに「すごく良い子」だなと思っています。
「この子には友達なんかできないのでは」と勝手に思い込んで心配していましたが、友達もできて、今は毎日楽しそうに学校に通っています。
PROFILE 森中博子さん
小児科専門医。小4、小1の兄弟を育てる母。長男が5歳のときにADHDと診断されたことをきっかけに、発達障害・グレーゾーンの子育てに悩む保護者をサポートする発達科学コミュニケーショントレーナーとして活動を開始。親子の未来を創る発達診断「ママカルテ」主宰。熊本県在住。
取材・文/阿部花恵