「人は生物であること」を忘れてはいけない

ただし、学びに対する意欲や自信が育っていない子は、紙と鉛筆による勉強が抵抗感を高めてしまう場合があります。そのため、導入はタブレット端末でラクに知識や興味を広げたうえで紙に移行し、併用しながら知識を拡大していくという方法が効果的かもしれません。そんなふうに本人の意欲や様子をよく見て活用していくことも大切です。

 

ご相談者様は、紙かタブレット端末かを選ぶタイプの通信教材でお悩みとのことですが、ここまでご説明したように、併用していくことが望ましいです。

 

紙を選んだ場合は、インターネット上で利用できるコンテンツや学習アプリを併用するとよいでしょう。全国学力・学習状況調査のCBT(Computer Based Testing)化の準備が進んでいるほか、入試でCBTを活用する大学なども出てきており、画面上で回答する練習をしておくという観点からも、デジタル端末には慣れておいたほうがよいと思います。

 

注意したいのは、インターネットコンテンツは、いくらでも情報に触れられるため、時間のメリハリがつきにくくなる弱点があるという点です。「ここまで集中したらやめようね」とタイムテーブルは親が決めてあげたほうがよいと思います。

 

アプリも、受け身になりやすいコンテンツに偏らないようにしましょう。動画配信サービスも、学びたいことが明確にあったうえで活用するのは効率がよいのですが、だらだら見るだけになってしまわないよう注意が必要です。

 

一方、タブレット端末の教材を選んだ場合は、家庭で紙の学習を補ってあげてください。繰り返しになりますが、人が生物であることは忘れてはいけません。フルデジタルによる学びのよさを主張しすぎる方は、そこを理解されていないように思います。

 

画面を通じた学習は、集中力が持続しなかったり、回答できていても本当の理解につながっていなかったりする場合があるので、親御さんが学習の進捗や理解度などを注意して見てあげてください。

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!