あらゆる分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていますが、学校現場でも、学びのDXを目指すGIGAスクール構想のもと、1人1台のタブレット端末が配布されました。こうした時代における学習スタイルのあり方とは? 教育家・見守る子育て研究所(R)所長の小川大介先生が、アドバイスします。
【Q】将来を見据えてタブレット学習を選ぶべき?
教育現場でもタブレットの活用が増えてきました。それに伴って、習い事もずいぶんと多様化してきたように思います。公文や学研のように紙を使った学習をさせる習い事もありますが、いっぽうでタブレットを使った通信教育も増えました。私が今子どもたちのために考えている通信教育は、タブレット学習か紙学習か教材を選ぶことができる教材です。
デジタルネイティブの子どもたちですから、将来を見据えてタブレット学習にしたほうがいいのかなと思いつつも、私は紙で学ぶ体験しかありませんし、タブレットより紙のほうがなんとなく良さそうな気もして、どっちにしたほうがいいのか悩みます。選ぶときのポイントがあれば教えてください。
それぞれの特性を生かし「併用」する視点を
「タブレット端末or紙」という2択の考え方は、世界でもかなり遅れた考え方です。まずは、これからの時代はどちらも使って学ぶことが当たり前だという前提に立ちましょう。
そもそも、学ぶという行為は、身体的な行為です。人間は生物であり、コンピュータではないので、ただ情報を流し込むだけでは学びにはなりません。自分の身体を通した実感と結びつけないと、学びは動き出さないのです。
たとえば国語なら、教科書に描写されている場面は、それと似た自分の体験や感情とひもづけることで、生きた理解につながります。社会であれば、身の周りの地形や気候などの生活体験とひもづけることで共通点や違いが浮かび上がり、そこから因果関係を考えていくような思考に発展していきます。
実際、タブレット端末の学習に偏った場合、学力が落ちることは明らかになっています。 韓国は日本に先駆けてタブレット端末による教育を推進しましたが、幼少期にデジタル教科書のみで学んだ場合、学習成果が落ちることがわかり、ずいぶん前から見直しが進んでいます。
紙に書く、まとめる、式を書いて数字を取り扱うなど、手で書くという行為を通した学びが成長のうえで必要なのは、揺るぎない事実なのです。
いっぽう、デジタル教材の魅力は、さまざまな知識や問題演習を柔軟に提供できる点にあります。多くの情報に速くアクセスできるため、単位時間当たりの学習効率も、紙に比べて高いです。
また、AI型の教材であれば、本人のデータに基づき問題を出題してくれるので、個別最適な形で基本演習に取り組めますし、振り返りにも便利です。映像で学べるという強みもあります。
こうしたそれぞれの特性を踏まえると、学びの土台の構築や思考力を要する応用発展的な内容は紙を通して行い、年齢が上がるにつれてタブレット端末の学習を上手に取り入れ、効率的に知識のインプットの強化や基礎演習の拡大をしていくのが望ましいでしょう。紙とタブレット端末によってそれぞれどのような力を伸ばしたいのかを理解し、併用するという視点を持つことが大切です。