けんかが絶えない兄弟に、毎日手を焼いているご家庭も多いのではないでしょうか。今回は、暴力を伴う兄弟げんかに困り果てている親御さんからのご相談です。教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介先生が、アドバイスします。

 

「絶えない「兄弟げんか」暴力の裏に隠れたSOSとは?」P1
「絶えない『兄弟げんか』暴力の裏に隠れたSOSとは?」P1

【Q】兄弟げんかが絶えません「一体どうしたら…」

小6と小3の兄弟を育てる母です。毎日、言葉の暴力をはじめ、蹴ったり、殴ったりと、兄弟げんかが絶えません。もちろん「やめなさい」と注意しますし、やりすぎと思うときは私があいだに入って全身で止めています。

 

特に上の子は、怒るとものに当たる傾向にあり、自分のなかでまだその感情をうまくコントロールできてないように感じます。先日は、上の子が蹴ったせいで、下の子の肋骨が折れました。自分がいかに大変なことをしてしまったのか、しっかりと言い聞かせました。上の子も理解してくれ、泣きながら弟に謝っていました。しかし、また次の日になったら蹴っていたので、本当に呆れてしまいました。

 

子どもたちがけんかをしないようにするには、どうしたら良いのでしょうか。

暴力の裏に目を向け「自己点検」と「環境整備」を

憎しみや攻撃的な欲求から意思を持って暴力をふるっているのか、結果的に“暴力をふるってしまっている”のか。まずはその線引きを、周囲の大人がしなければいけません。暴力の裏にあるものが前者である場合は、当然ながらその行動を修正する必要があり、しつけや言い聞かせが重要になります。しかし子どもの暴力の大半は、後者のケースです。

 

ご相談者様の上のお子さんも、泣きながら弟に謝っていたとのことなので、「結果としての暴力」ではないかと思います。望んでやっているのではなく、持て余した感情があふれ出てしまった結果、暴力をふるってしまっているのでしょう。こうした場合、本人も困っているので、しつけで子どもの行動を変えようとしても改善しない場合が多いです。

 

幼少期から暴力が見られるお子さんも少なくありません。上のお子さんが暴力をふるい始めたのがいつ頃かはわかりませんが、現在小学校6年生とのことなので、そのSOSは深刻であると捉えたほうがよいでしょう。

 

言葉の暴力が出るというのも、わだかまりやツラさを抱えているサインです。人は何か苦しさを抱えていると自尊感情が落ちますので、自分自身を投げやりに捉えてしまう事情が何かあるのではないかという視点で、上のお子さんを見てあげてください。

 

たとえば、学校に居場所はあるのか、授業中に活躍できず軽んじられていないか、いじめに近い扱いを受けていないかなど、学校の先生にも聞いていただきたいと思います。習い事なども含めて、上のお子さんを受け止めてくれる場があるのか、確認してみてください。

 

また、家庭内での存在アピールとしての暴力であることも考えられます。下のお子さんが生まれた頃、上のお子さんは3~4歳でしたよね。幼稚園や保育園に入るなど、環境面でも変化があったでしょうし、その頃から自分の気持ちを受け止めてもらえないなどの寂しさを抱えていた可能性もあります。

 

ご相談者様も、いつからか上のお子さんに「お兄ちゃんなんだから」とか、「何でできないの」といった言い方を繰り返すようになってしまったのではないでしょうか。今一度、ご自身の上のお子さんへの接し方を点検してみてほしいと思います。

 

現在、上のお子さんが、何かを話す際にとりとめもなく早口で必死にしゃべるなど、安心が得られていないような様子が見られるのなら、気持ちを落ち着かせてあげることが必要です。「あなたの気持ちはちゃんと聞くよ」と声をかけ、気持ちを持て余してしまうときに、苛立ったり必死になったりする必要がないことを伝えてあげてください。

 

そのうえで、「きっと困っていることがあるんだよね。ママやパパにどうしてほしいかな」と話し合いましょう。「いい加減にしなさい」と注意するのではなく、「親として何とか助けてあげたい」という関わり方をしてほしいと思います。まずは、こうした環境整備が必要です。