2015年に長女を出産したミュージシャンの坂本美雨さん。産後2か月のときに自身のレギュラーラジオ番組に復帰しました。以降も、コンサートや音楽制作の現場にも赤ちゃんを連れて行っていたそう。それは「自分だけの価値観で育っては怖い」ため、信頼する人を育児に巻き込みたい、という思いからでした。このほど子育てエッセイ『ただ、一緒に生きている』を上梓した坂本さんに、当時の思いを伺いました(全3回中の1回)。
子が乳製品アレルギー、スタジオで授乳も
── 産後2か月でレギュラーラジオ番組「ディア・フレンズ」(TOKYO FM)に復帰され、お子さん同伴でお仕事をしていたそうですね。保育園に預けず、職場に連れて行こうと判断したのは、どういった思いからだったんでしょうか。
坂本さん:
子どもと一緒にいたくて、離れられなかったのは大きいんですが、それ以上に、子どもが乳製品アレルギーでミルクを受けつけず、保育園に預けられなかったんですよね。
完母で育てていたので、2時間以上、娘と離れることが難しくて。妊娠中、私のお友達が、「チャイルドマインダー」という資格を持っていると聞いて、彼女に「仕事復帰するときはベビーシッターをお願いできませんか」と相談していました。だから、彼女と当時のマネージャーと、“三人四脚”のような形で復帰しました。
── 現場では、お子さんが泣いて収録に集中できない、といったもどかしさは感じませんでしたか?
坂本さん:
もどかしさというより、赤ちゃんの頃は、一緒にいるときは常にモード的に「お母さんスイッチ」がメインで、その合間に仕事をする、みたいな気持ちでした。
だから、ちょっと泣いてもグッと心を鬼にして、ブースの中に入っていましたね。シッターさんをとても信頼していたし、彼女が子どもをスタジオの外に連れて公園に散歩しに行ってくれたりしました。
だから、私と離れているときも、子どもは楽しそうにしている場面が多かったと思います。
── 坂本さんのエッセイでも、たくさんの大人に見守られながらすくすくと育っていく娘さんの様子がつづられていますね。母子だけではなく、いろんな人が子育てにかかわってくれる良さを感じていますか?
坂本さん:
すごく感じています。本当にそれが大きくて。
私は自分が正しい、良い人間だと思っていなくて、自分の考え方や価値観に自信があるわけではないので。そんな私だけの価値観で、子どもが育っていってしまったら怖いな、と思ったんです。
ただ、自分には自信がなくても、「自分が好きな人」に対しては自信がある。私が好きな人たちの影響をたくさん受けて、育ってくれれば良いなと思って。
だから、みんなに一緒に育ててもらおう、と妊娠中から思っていました。