「おかあちゃん」卒業がさみしい理由
──「おかあちゃん卒業」の話はせつない気持ちになりました。長男くんがむぴーさんを「おかあちゃん」と呼んでいたのが、急に「お母さん」と言うようになったんですよね。
むぴーさん:
そうなんです。いつの間にか「お母さん」に呼び名が変わっていました。長女もつられてか、気づいたら「お母さん」って言うようになって。すごく悲しかったです。
──「おかあちゃん」は、むぴーさんがそう呼ばせていたわけではなかったんですか?
むぴーさん:
はい。最初は、「なんでおかあちゃん?」って不思議に思っていました。
長男は話し始めるのが遅くて、それまで自分の言いたいことがあるだろうになかなか言葉にできなかったみたいで。だからあの頃は、「おかあちゃん」って呼んでくれるだけでうれしくてしかたありませんでした。
「おかあちゃんだよ、おかあちゃんだよ」と、長男から呼ばれる度に心の中で語りかけていました。それが当たり前になって、何年も続いていたのに、急に「お母さん」になっちゃって。
──「おかあちゃん」は、むぴーさんにとって特別な呼び名だったんですね。
むぴーさん:
でも、長男は自分が「おかあちゃん」と呼んでいたことはもう覚えていないかも。子どもって、昔のことはほぼ忘れてしまうんですよね。2年くらい前のことですら忘れているし。
たとえば、長男は2歳くらいのとき、『となりのトトロ』がすごく好きで、1日3回くらい観ていたんです。それなのに、最近久しぶりに観たら、「初めて観た」と言い出して。「えっ!」ってすごく驚きました。トトロの映画を何度も見たことも、ストーリーも何も覚えていなかったんです。あんなに好きだったのに。
子どもの小さな頃の何気ない思い出って、親の記憶の中にしか残っていないんだな…って、ちょっと切なくなりました。
── わかります。うちの子も似たことがありました。例えば、ビデオデッキにバナナの皮を入れたり、予想できない場所に不思議なものが入っている時期があったのですが、そういうことがなくなったときは成長を感じたと同時にさみしかったです。
むぴーさん:
子どもが小さいときって、いつ卒業の瞬間を迎えるかわからないことが多いですよね。いつの間にか終わっちゃっていたという。
長男は、幼い頃恐竜が大好きで、いつも恐竜のおもちゃを持ち歩いていたのですが、ある日突然、ゲームをやるようになって、恐竜のおもちゃでは全然遊ばなくなってしまいました。こんなことなら、あのときもう少し一緒に遊んでおけばよかった、写真をもっと撮っておけばよかったと思うんですよね。