育児漫画を描く作家の多くが直面する悩み
── 子育てをテーマにした漫画を作っていると、子どもの成長にともなって、どこまで家族のことを描けばいいのか迷うことはありませんか?
むぴーさん:
育児系の漫画を描かれる方はいつか直面する悩みだと思います。実は、長男を授かってからのことを描いた一冊目の著書を出版するときにもすごく悩んだんです。
自分だけではなく長男の個人的なエピソードも掲載することになるので、本当に世に出していいのかどうか、出版の依頼を受けたとき、夫や長男とたくさん話をしました。
── そうですよね。どうせなら長男くんにも嬉しいと思ってもらえる本にしたいですよね。
むぴーさん:
長男が小学生になってからも、描くと読者の方に喜んでもらえそうと思うようなエピソードがいろいろあるのですが、長男に確認をして「描いてもいいよ」とOKをもらったものを描くようにしています。
私だったら、何気ない会話でも自分が知らないところで漫画にされるのは抵抗があります。
むぴーさん:
もしかしたら、長女も次男も小学生になったら、あまり子どものことは描かなくなるのかもしれません。一人ひとり個性が出てきて、個人が特定されないようにオブラートで包むのは難しいような気がするんです。
── 子どもが小さいから描けることってあるかもしれないですね。
むぴーさん:
個人的なこととは関係のない旅行記は楽しく描けるかもしれません。と言いながら、育児漫画も描き続けているかも(笑)。
── もしかしたら「描いてくれないとさみしい」とお子さんたちから言われるかもしれませんね。長男くんは自分が登場する漫画を誇らしく思っていたりして。
むぴーさん:
そうだといいですね。そういえば、一冊目が出版されたとき、長男は喜んでくれたんです。「これ僕だよね」って。
なぜ「むぴー」になったかというと…
── ところで、むぴーさんという名前はとても個性的ですが、どんなきっかけで生まれたのですか?
むぴーさん:
これはもう完全に私の性格を表しているのですが、最初に漫画を描くとなったときに、作者名が必要だと思って、でも自分で考えるのが面倒臭くて、名前を代わりに作ってくれるWEBサイトを使ったんです。必要事項を入力していったら、「あなたは今日から“むぴー”さんです」と名前が出て。「よしやった。これでいこう」と決めたんです。
── …えっ!もっと考え抜かれた名前だと思っていました。
むぴーさん:
特別な思いもこだわりもないんです。適当な性格なんです、私。もっと子どもたちへの思いなどを込めたほうがいいのかな。考えてみます(笑)。
PROFILE むぴーさん
漫画家・イラストレーター。大阪府で7歳長男・5歳長女・1歳次男との日常を描いた育児漫画で話題を呼んでいる。著書に『母がはじまった』(PHP研究所)、『いつか家族でやりたい99の楽しいことリスト』(CCCメディアハウス)などがある。
取材・文/高梨真紀 画像提供/むぴー