「休憩を60分取ってしまうと、保育士が代わる代わるいなくなってしまうため、保育士同士が子どものことをしっかり話し合う時間までは取れませんでした。これは、担任の先生以外にもフリーの保育士をうまく配置することで解決しまして、現在は国の基準の2倍以上の保育士が働いています」

 

待ちに待った給食の時間。思い思いに食べ進める子どもたち

野上さんは、保育の現場での事務作業が多いことも業界の課題だと話します。

 

行政の監査に書類のまとめが必要なほか、子どもの成長や活動を月単位、週単位で記録し、子どもたちの個別の記録も毎日行うなど事務書類が多いそうです。

 

「午後のお昼寝中は、5分おきに呼吸状態をチェックし、うつ伏せになってしまった子は仰向けにして、それを記録しています。書類が山のようにあるのですが、何か事件や事故が起きると必要書類がどんどん増えていき、決して減ることはないです。

 

もちろん、何かあっては決してならないのですが、もう少し提出書類が減ると助かります」

 

事務作業の負担を減らすため、現場の保育士以外の職員の配置にも力を入れました。園長などが請け負う園も多いそうですが、エクセルの報告書などの作成は、在宅勤務も可能な事務スタッフを雇ったそうです。

 

「保育の世界は、福祉の心で成り立っていますので、業界として厳かで声高にいう雰囲気がないのもあります。でもそれでやっていくのは限界だということを、他業界からきた身として伝えていけたらと思っています」

 

PROFILE 野上美希さん

シンクタンク勤務後、人材企業にて女性のための人材紹介サービスの代表を務める。自身の妊娠を機に幼稚園の運営に携わり、子育てひろばや学童保育、6つの認可保育園を開設。現在、国基準の2 倍以上の保育士確保を実現し、保育者の働き方改革を実践している。

取材・文/内橋明日香 撮影/北原千恵美 写真提供/Picoナーサリ新高円寺