「学校に通うことが正義」という価値観

同様に、弟さんの理解も深めましょう。保育園や習い事に行きたくないというのは、弟さんなりの理由があるはずです。

 

明日は行きたくないと言う場合は、不安や自信のなさが原因か、他にやりたいことがあるか。直前になって行きたくないと言うのであれば、「自分のペースを大事にしてほしい」という主張の表れかもしれません。以前はお出かけの準備をすべてしてもらっていたのに、急に自分でやりなさいと言われるようになり戸惑っているというケースなどが考えられます。

 

とにかくご相談者様は、お兄さんと弟さん、それぞれの話を聞き、今起きている現象を捉え直してみてください。ぜひご夫婦で取り組んでいただきたいと思います。それができれば、今後もし「僕も学校に行きたくない」と弟さんが言い出しても何も問題ありません。

 

「お兄ちゃんは行きたいのだけど、今は行けない事情があるだけ。また学校に行くよ」といった感じでお兄さんの事情を踏まえて説明し、「あなたも通ってみて考なければいけないときは一緒に考えよう。だから安心して学校に行きなさい」と言えばいいだけ。普段、保育園で楽しそうにお友だちと遊んでいるなら、「小学校も同じように楽しいよ」と安心させてあげればいいでしょう。

 

私は日頃、不登校のご相談もたくさん受けますが、よくよくお話をうかがうと、お子さんの状態を周囲の大人が誰も丁寧に見てこなかったというケースが多いです。また、みなさん、「学校に通わせなければ」という一心であったと言います。

 

おそらく多くの親御さんが、学校に通うことが正義だと考えています。しかし、その価値観は疑ったほうがいいと私は思っています。

 

最近出版された、おおたとしまささんの『不登校でも学べる 学校に行きたくないと言えたとき』(集英社新書)という本は、学校の存在意義を掘り下げて考える材料としてお薦めなので、不登校の問題で悩まれている方はぜひ読んでみてください。

 

昔は先生に言われたとおりにしていれば評価されましたが、今は主体性が重視される時代。そんな時代や社会の要請から学校がずれている面があるのは明らかですし、今は学校の外にも学びのチャンスがたくさんあります。

 

この時代における学校の価値とは、いったい何なのでしょうか。皆様もこの機会に考えていただきたいと思います。

 

PROFILE 小川大介さん

教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ イラスト/まゆか!