「芸人って、失敗を笑いに変えられる」

── 介護レクの活動を続けるうちに、当初西川さんがおっしゃっていた「介護に携わることで、偽善者だと思われるんじゃないか」という思いは、払拭できたんでしょうか。

 

松本さん:
いちばんは、介護のプロの皆さんがめっちゃ感謝してくださったんです。

 

「偽善なんて、そんなことないですよ。どんどんやってください」って。「介護を広めていただいて、ありがとうございます」「お笑いの方が介護に参加してくださるのありがたいです」とか、たくさん言っていただいて。

 

最初はプロの方に「よそ者が入ってきて」と毛嫌いされるかな、と思ったんですけど、めっちゃ応援してくださって。だから、僕らはできることをやろうと。

 

「高齢者をバカにしてるやろ」って言われても「僕らは愛があるので。ぜひ生で見てください。おじいさん怒ってますか?笑顔でハッピーで笑ってますよ」って言いたい。

 

利用者さんが介護レクに参加しないときって「失敗してしまうから、恥ずかしい」って方が多いんです。でも、芸人って、失敗を笑いに変えられるんですよね。

 

テレビでも僕ら、まあまあ失敗するんですよ(笑)。さんまさんの番組に出たりしても、わかりやすく「なあ、レギュラー」って振ってくれる。それって、気絶を求められてるってことなんですけど。でも、僕らわからへんから、話振られても、西川くんもボーっとしてるんですよ。「なんですか?さんまさん」みたいに。その二択を失敗するんですよ(笑)。

 

──(笑)。

 

松本さん:
でも、さんまさんは「いや、違うやん!そこ、西川くんが気絶せな!」みたいに、失敗してもおもしろくしてくれるんですよ。そうすると、僕らはめちゃくちゃ嬉しい。だから、失敗しても恥ずかしくないんですよね。

 

逆に無視されたり「失敗しても大丈夫」って慰められたほうが、やり場がないんですよ。

 

だから、僕らは、失敗を笑いに変えることで救いたいって思ったんですよね。うまいこと笑いに変えられたら、その人が恥ずかしくないようになる。

 

マジな空気を作らず、失敗をその人のせいにしないというやさしさって、芸人ならではやなって。

 

介護レクで用いる手遊びについて説明してくれるレギュラーの二人

 

── 私にも認知症の家族がいますが、なかには、ひとつ失敗してしまうと、次を踏み出すのが怖くなってしまう人もいますよね。それをあたたかく笑いに変えてもらえるのはありがたいです。

 

西川さん:
ご家族だったら、できると思うんですよ。信頼関係があるから、失敗も笑いに変えられると思うんです。

 

松本さん:
「また失敗して~!4回目やで~!」とかね。

 

西川さん:
そうそう。ただ、僕らみたいな第三者がやったときに、いじりがいじめに見られてしまうという違いがあると思うので、その線引きは難しいんですよね。

 

松本さん:
テレビで、リアクション芸人さんがいじられてるのを見て「かわいそうやな」とか思わないじゃないですか。ツッコむほうも愛があるから。もう今の時代、見てたらみんなわかると思うんですよ。そもそもいじめる人は、そんなん見んでもいじめますし。

 

その愛を僕らは、おじいちゃんおばあちゃんに向けている、と言うことが伝わればいいなと。そして、介護業界の方にも僕らのこのフォーマットを伝えられて、介護をみんな楽しくできればな、と。