子育ては「お互いさま」で助け合って

── 異国での子育ては大変なことも多そうですが、頼りになる方はいらっしゃいましたか。

 

中野さん:
日本人のママ友の存在がありがたかったです。親や親族が近くにいないので、子どもが熱を出したときはまだしも、自分が病気になって夫も仕事のときなどに友達が来てくれて、子どもと遊んでくれて。

 

お互いさまで、友達の体調が悪いときに私がお子さんを預かることもありましたし、助け合って子育てをしてきました。日本人コミュニティがすごく密で、ママ友もみんな情報通なので、子育てグッズや寝かし方なども教えてもらいました。今でも連絡を取り合う仲です。

 

シンガポールで出会ったママ友たちと中野さん(写真右)。今でも連絡を取り合う仲だという

妊娠中は、産後うつや気分が落ち込むことなんて「自分にはないだろう」と思っていたんですが、子どもと2人でいるとやっぱり孤独で。最初はなんで泣いているかもわからないし、頼りになる人も近くにいない。ネットで調べると、どんどん怖い情報が目に入ってきますよね。ケガや病気でも悪化するとこうなる、とか。

 

何か困ったときに子育て経験のあるママ友に相談して、ちょっとしたことなら「大丈夫、うちもそうだったから」と言ってくれる人がいたのは、心強かったです。

 

── 海外生活を経て感じるご自身の変化はありますか。

 

中野さん:
あまり周りの目を気にしなくなりました。日本にいるときは、アナウンサーの仕事をしているし、見られている意識をしなくてはいけないと思っていました。仕事ではないオフの日でも、気が抜けなくて。今思えば自意識過剰かもしれないのですが、プライベートで外出する際も「ちゃんとしていないと」と常に思っていました。

 

海外に行ってそれが全てなくなったんです。私のことを知っている人はほとんどいないし、それぞれに自分の考えを持ち、夢に向かっている方にたくさん出会ったら「私は、なんて人の評価ばかり気にしていたんだろう」とスッと心が軽くなりました。「自分は自分でいいんだ」と思えるようになったように感じます。あまり気を張らなくなったのは良かったことだと思っています。

 

PROFILE 中野美奈子さん

1979年香川県生まれ。慶應義塾大学卒業後、フジテレビジョン入社。2012年に退社後、フリーとなる。2013年より丸亀市文化観光大使。シンガポール、広島県で暮らし、2021年より故郷の香川県在住。プライベートでは1男1女の母。

取材・文/内橋明日香 写真提供/中野美奈子