── おたみさんはその様子を見て、どういう風に感じましたか?

 

おたみさん:
男の子がお財布みたいなものとメモを手に握っていて、お母さんと妹のためにお総菜屋さんに来た──。まるで一家の大黒柱のようなたたずまいがすごく印象深く、グッと来まして。

 

ちょうどその時期に、学童保育のアルバイトもしていたこともあり、「こんな小さい子どもがひとりで来るとはなかなか…」と。大人の世界にぽんと放り込まれた感じがして、不安だろうなと思いましたね。

 

僕が小学生のときに初めてひとりで皮膚科に行ったときのことも思い出しました。当時、受付をしないと呼ばれないということが分からなくて、30~40分待合室で待っていたら、子連れのお母さんが「大丈夫?」と話しかけてくれて。それで、安心して泣いちゃったんですよ。

 

それがちょうどお惣菜屋さんにきた男の子と同じ歳くらいだったので、きっとその子もすごく緊張しているだろうなと。なので、お総菜を詰めるのを待っているあいだ、一緒にそばにいてあげました。

 

少しでもなごむように「おうち遠いの?」とか話しかけていたら、男の子は最近敬語を覚えたというような雰囲気で、ずっと「はい」って答えていましたね。

 

── パートの方が「おばちゃんからのサービス」と自腹で唐揚げを奢ってあげたり、「(自分も同い年くらいの子どもがいるから)他人事にするのは無理」とおっしゃった親目線のエピソードも、グッとくるものがありました。

 

おたみさん:
そうですね。パートの方は「偉いわね」って何度もおっしゃっていました。「他人事にするのは無理」とおっしゃった後に続けた言葉も忘れられません。「サラリーマンのおじさんもこの子と同じようにメモを持って来るのにね…」って(笑)。

 

── 確かにそうですね、おじさんがメモを持っている姿には残念ながらグッと来ないですね。

 

おたみさん:
そのお惣菜屋さんには、サラリーマンのお客さまも多かったんです。だいたいみなさん、家族に頼まれたのか、メモを持っていらっしゃっていたんですけどね(笑)。