パティシエの環境改善にも貢献したい

—— 技術と体力どちらもないとできないんですね。そこまでして、チョコ細工にこだわるのはなぜですか。

 

こしチョコさん:
飴細工やマジパン細工、チョコ細工って、とても高い技術をともなって完成します。

 

そうしたものは業界主催の大会で技を披露して、評価されれば業界で名前が知られる。でもそれだけ。その技術がもったいないなと思って。

 

SNSで発信し多くの人にチョコの世界を楽しんでもらいながら、プロでも一般の人でも技術が学べるように、細工教室(アトリエチョコッシー)として開業しました。

 

色素を吹きかけたり、磨いたりして木の質感を表現

また今年からその技術を活かしたチョコ工場も設立しました。

 

僕だけでなく、飴細工やマジパン細工など、数々の製菓コンクールで知り合って、同じ思いで切磋琢磨する仲間に講師にもなってもらっています。

 

—— ホームページを拝見するとどの作品も繊細ですよね。食べるのはもったいない感じ。ただ、正直にいうと受講料が高額な感じが…。

 

こしチョコさん:
菓子細工の技術はふだんお店で働いているだけでは身につかず、仕事終わりや休日など、限られた時間や睡眠時間を削って技術を習得します。

 

だから、もう少し正当な対価として評価されてもいいんじゃないか、と思ったんです。

 

実際に教室を開くと、医師の方や建築関係の方、ゲーム関係の人まで多くの方が参加してくれています。

 

チョコや市販のお菓子をも使って作りあげた街。「将来的にはチョコ細工で大規模な街を作りたい」

職種の違う参加者の多くは、もともとお菓子作りが趣味でより高い技術を学びたくて来る方が多いようです。

 

陶芸や絵画教室のような感じで、新たな体験をしたい方もいるようですね。

 

—— それはきちんと技術に対してお金が得られるからいいことですよね。

 

こしチョコさん:
パティシエは低賃金、長時間労働の環境はいまだに残っています。職業に対するそうしたイメージも壊していきたいと思って。

 

それで挫折する若い人も多く見てきました。マイナスなイメージを壊して、改めて「パティシエ・ショコラティエってかっこいいな、素敵だな」と思ってほしいなと。

 

高い技術力をもって、ここでしかできない価値を加えて、見合った対価をもらう。労働時間も適したものにして、ふつうに休める環境を作っていけたらと思います。

 

PROFILE  こしチョコさん

1993年北海道生まれ。製菓専門学校卒業後、都内のチョコレートショップを経て、チョコレートOEM企業でショコラ製造責任者、銀座高級パティスリーでパティシエとして活躍後、2021年にお菓子の細工教室「アトリエチョコッシー」で起業。2022年よりチョコ工場として株式会社chocolart設立。

 

取材・文/西村智宏 画像提供/こしチョコ