子育て世代が無料で使用できる仕組み
── 使用料無料という点も魅力だと思います。
長谷川さん:
そうなんです。「mamaro」ではお母さんたちから1円もお金をもらっていなくて、このビジネスモデルに共感してくださる方もいます。
ありがたいことに、乳幼児向けの施設を拡充する必要性を感じている施設が増えて、そういった施設から収益を得ることでお母さんたちの経済的な負担をなくしています。
もう一点、「mamaro」の中にあるモニターも収益源になっているんです。モニターでおむつや化粧品などの広告を配信することでも収益を得られる仕組みを作っています。広告の内容はあくまでもお母さんたちに有益な情報のみに絞っていて、少しでも情報収集のお役に立てればと思っています。
──「mamaro」の使い方として、授乳やおむつ替えだけでなく、疲れたときにひと息つけるスペースとしてもゆっくり過ごせそうです。
長谷川さん:
「mamaro」の主な対象は乳幼児から6歳くらいまでのお子さんを育てているご家庭です。使い方は特に限定していないので、休憩スペースとして利用していただいてもOKです。お母さんが外出中にお子さんを抱っこして腰が痛くなったときなどに休んでいただいてももちろん大丈夫。さく乳のスペースとしてもご利用いただけます。
「mamaro」は、「ママのための部屋」が語源になっているんですよ。女性には外出先や勤め先などで、プライバシーを確保できるスペースが少ないということで、お母さんのための部屋を作りたいと思いました。
もちろん、お父さんの使用も大歓迎です。例えば、お母さんの買い物中にミルクを与えたり、子どもを着替えさせたりしたいというお父さんの場合、男子トイレしかないけれど着替え台がないから連れて行くのに抵抗があるという方が多いんです。そういった方にも役立っているようです。
お母さんたちへ「どんどんクレームを声にして」
── 今後「mamaro」の事業を広げていくなかで、お母さんたちにどうあってほしいと思いますか?
長谷川さん:
笑っているお母さんが増えると、まわりも幸せですよね。育児ってすごく大変だし、「笑えない」と言われるかもしれませんが、少しでも笑顔のお母さんが増えると社会にとっても良い効果が生まれていくと思っています。
お母さんがいつも怒った顔や疲れた顔ばかりしている世界は、僕は幸せだとは思えません。
お母さんたちはいつも忙しいと思うんです。日々の育児は超重労働の積み重ねのようだと思うのですが、片手間でもいいので「クレーム」を上げてほしいですね。
── クレーム、ですか?
長谷川さん:
お母さんたちってすごく忙しいから、そのときそのときですごく課題感を感じていても、子どもの成長とともにまた次の課題が降ってくるので、クレームを入れる暇もないんです。
そうすると「mamaro」のような商品やサービスは、「クレームがないから必要ない」と判断されがちです。授乳室がたりないと僕が感じた課題も、解決されないままになってしまう。
育児中のお母さんたちが少しでもラクになるために、課題をひとつずつクリアしたい。ですから、お母さんたちにはぜひ、どんな小さなことでも課題を声を上げて伝えてほしいです。SNSも一般的になったし、声を上げやすい環境になっていると思うんです。
家族だけで解決できる問題ではないことも多いので、ぜひ社会や企業に頼ってほしいです。企業を含めた社会全体で状況を変えていきたいですね。
── 今後はどのように事業を広げていきたいですか?
長谷川さん:
新しい要望も上がっていて、「mamaro」で叶えられる解決は微々たるものでもあるので確実に改善を進めたいです。世の中があっと驚くものを提供するアイデアや技術は、僕たちのようなメーカーの価値だと思っているので、お母さんたちのヒアリングをもとに課題を解決しながらも付加価値を創れるような企業でありたいと思っています。
取材・文/高梨真紀 写真提供/Trim