「思い描いていた育児ができない」

── 2人の娘さんはコロナ禍での出産、育児となりました。

 

キンタロー。さん:
ちょうどコロナが蔓延し始めた頃に上の子を産んで、今よりもっと未知のウイルスに対して混乱していた時だったので、どこまでならいいのか、わからないことが多かったです。お散歩をしたいけど公園はいいの?とか。今でも自由に遊びに連れて行きにくい状況です。

 

赤ちゃんを連れて外に出歩くことも怖いという状況から子育てがスタートして、除菌グッズやトイレットペーパー、哺乳瓶の除菌剤も混乱のなか品薄になり、買えなくなったこともありました。どうしたらいいのと焦って右往左往して。

 

子どもと一緒にいる貴重な時間なのに、常に何かに怯えて不安を抱えて手探りだらけで、自分が思い描いていたような余裕のある子育てが出来ていなかったなと思っています。

 

コロナ禍が広がり始めた頃、子どもの予防接種に行くときのスタイル。不安だったので、フェイスシールドをつけて万全の状態のキンタロー。さん

── 育児に関することは何かと不安になってしまいますよね。

 

キンタロー。さん:
休憩のつもりでSNSを見ていると、子育て関連の情報や動画も良く目に飛び込んできます。

 

そこにはだいたい子どもに、栄養バランスも見栄えも完璧なご飯をあげていて、それを子どもがパクパク食べている、とてもキラキラした様子が映っています。

 

それを見ると「あぁ、私はこんな完璧なご飯をあげられていない。どうしよう。こんなパクパク食べてくれない。どうしよう。こんな朝から完璧なもの作る余裕がない、どうしようどうしよう、どうしよう…」と、他人と比べて、自分はちゃんとママ業ができていないとかなり自己嫌悪に陥ってしまって。私の性格的にきりがないので、極力見ないようにしたほうが良いのかなと最近では思っています。

 

最初は子育てに関することもSNSに書いていたんですけど、マイナスなコメントもあったりして。私も私で、気にしなきゃいいんですけど、子育て中でいっぱいいっぱいでメンタルも繊細になっているときに、会ったことも見たこともない人から言われるのが辛かった。そういうふうに自分の毎日がとらえられてしまうんだと思って。

 

子育ての発信を楽しみにしてくれている方々ももちろん沢山いらっしゃいました。同じ状況のママたちとの情報交換のつもりで、共に頑張りましょうという気持ちと、コロナ禍でなかなか人と会えないなか、初めての手探りの子育てを見守って頂き、アドバイスをもらいながらやっていこうというつもりで発信し続けていたのですが…。

 

そう受け止めてくれない方々も残念ながら存在して、会ったこともない人からの思いもよらない怒りのぶつけどころや攻撃対象にされてしまうこともありました。楽しみにしてくれている方も沢山いたので、残念な気持ちもあり葛藤しましたが、今はあまり書かなくなってしまいました。

 

時代の流れの中で、人のことを悪く、匿名で書きやすい世の中になっていて、芸能の仕事は前に出るので矢面に立たされやすいし、SNSがストレス発散の標的になっているのかなと思うこともあります。

 

私たちも同じ人間で、一生懸命奮闘しているママなので、自分がされたらどういう気持ちになるかを考えてもらえたらいいなと思います。

 

PROFILE キンタロー。さん

1981年愛知県生まれ。社交ダンスの講師などを経て、30才のときにお笑い芸人の道へ。芸人としての活動のほか、舞台、ドラマ、声優など、幅広いジャンルで活動。2017年、競技ダンスの世界大会でアジア人歴代最高位に入賞。現在は2児の母。

取材・文/内橋明日香 写真提供/キンタロー。