「どうせ変われない」という業界の雰囲気を変えたい

── 菅原さんが始めた取り組みで業界全体に変化を感じたことはありますか?

 

菅原さん:
物流業界の会社は国内で約6万3000社あるといわれていて、約98%が従業員100人以下の中小企業が占めています。「働き方なんて変えようがない、改善なんてできない」と思い込んでいる人が大半かもしれません。

 

私も職場環境の改善に着手した頃は、幹部の方たちに「どこも同じことをやっているんだからしょうがない。やり方を変えてしまうと仕事がなくなる」とよく叱責されたし、父とも喧嘩になったことも。「自分は会社から去るべきなのか」と思うときもありました。

 

でも、働き方改革が浸透している今、国による規制もあって、物流業界も変わらざるを得ない状況になっています。いつまでも「できない」と変わらないままの企業は淘汰されていくと思うんです。

 

ですから今後も自発的に変えるべきところは変える取り組みを継続するつもりです。私たちの取り組みを見て、どこかの企業に「うちも頑張ろう」と思ってもらえたらいいですね。労働環境を改善する会社が増えることで、業界全体のイメージが良くなってくれればと思います。

 

ただ、物流業界は働きやすい業種でもあるんですよ。単独行動の時間が多いからこそ一人の時間を大切にできるし、子育てや介護にあわせた柔軟な働き方も可能なんです。

 

── 女性ドライバーの方もときどき見かけます。

 

菅原さん:
業界全体では女性ドライバーの比率は3%にも満たないのですが、日東物流では6~7名の女性ドライバーに活躍してもらっていて、業界の平均よりは3倍ほど多いです。実際、物流の現場は進化していて、作業も身体への負担がずいぶんと軽減されているんですよ。

 

また、子どもの行事に合わせて休みを取ることにも柔軟で、「今日は午前3時から午前9時まで働く」といった働き方も可能です。ドライバー同士助け合っているし、女性にとっての働きやすさも改善されているので、今後もっと挑戦する女性が増えるといいなと思います。

 

── 今後は何か新しい取り組みは予定されていますか?

 

菅原さん:
現在取り組んでいる働き方改革については、まだまだ改善できる余地があるので進めたいです。

 

また物流業界ではドライバーの高齢化が進んでいるのですが、例えば定年後はトラックに乗らなくてもできる仕事ができる仕組みをつくりたいなと。これまでその人が培ったコミュニティのなかで、さらに10年仕事が続けられるような場をつくるのが目標です。

 

やっぱり高齢から新しい職場で新しい仕事を始めるのは大変ですよね。慣れ親しんだ職場で続けられる仕事を提供できれば、地域社会にとっても貢献できると思っています。

 

 

給与を維持しつつ労働時間を減らす、喫煙率を下げるなど健康へのリスクを軽減させるといった根本的な課題解決から働きやすさの改善を実現した日東物流。特に、会社がおせっかいを焼いてくれることで社員も身体を気遣うようになるという雰囲気づくりは、会社の地道な働きかけがあってこそかもしれない、と感じました。
 

取材・文/高梨真紀 画像提供/日東物流株式会社