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「長時間働いて稼ぐ」という考え方が当たり前だった物流業界の働き方を、働く人の意識から変えていくことに挑戦している人がいます。株式会社日東物流の代表取締役、菅原拓也さんです。前社長だった父親から反対されながらも入社し、経営者として職場環境を改善してきた菅原さんの挑戦について聞きました。

 

株式会社日東物流 代表取締役の菅原拓也さん
株式会社日東物流 代表取締役の菅原拓也さん

前社長の父に「物流はやめたほうがいい」と断られ

── 大学卒業後いったん別会社に就職するも、2008年に家業である日東物流に入社されました。前向きな選択だったとのことですが、なぜだったのでしょうか。

 

菅原さん:
就職活動が始まる大学3年の頃、ちょうどこれからの自分の人生についていろいろ考えたなかで、いちばんやりたいと思ったのが会社の経営だったんです。物心ついた頃から父が経営する日東物流で働いているドライバーやトラックはとても身近な存在で、跡を継ぐことも選択肢に入れながら将来の道を探っていました。

 

でも、あるとき「日東物流に入りたい」と話をしたら、父から「やめたほうがいい」と断られたんです。

 

会社は24時間、365日動いていて、社長だった父も忙しく、携帯電話が鳴れば時間に関係なく対応していました。「物流の仕事はお前が考えているほどラクな仕事ではない。まして経営者は孤独だよ」などと言われて。とはいえ、私には、親孝行も視野に入れると将来的に日東物流以外の選択肢はありませんでした。

 

跡を継ぎたいという意志を持ちつつ、修行的な意味合いも込めて他社に就職し、結局2008年に日東物流に入社しました。

 

日東物流のトラック
日東物流のトラック。何台も並ぶ様子は壮観

── 菅原さんは、物流業界の常識を変えるような職場環境づくりに取り組んできました。物流業界の人にとっての働きやすさとはどういうことだと思いますか?

 

菅原さん:
ひと言で言うと、「人が生活する上で、当たり前の環境をつくること」だと思っています。

 

物流業界は、他の産業と比較しても「長時間労働・肉体的にも厳しい・賃金が低い」と言われている業種です。

 

30年くらい前までは、長い時間働けば働いた分だけ稼ぐこともできて、どちらかというと高収入と言われていました。ところが、労働時間の規制や価格競争の加速などで労働環境が大きく変化したことで、これまでのように長時間働くことができず、十分な収入も確保できなくなっているのが現状です。

 

国をあげた働き方改革が推進されてから、各業界で残業時間を減らす動きが活発ですが、現場で働いているドライバーからすれば、「働く時間を短くされて給料を下げられたのでは困る」という不安にもつながります。

 

ですから、他の業界と同じように、労働時間を抑えつつ所得ベースを維持することが最重要です。休日も給与も平均以上に維持できて初めて、健康的な生活を送ることができると思うので。

 

理想は、労働時間が短くなっても給与が上がるか、少なくとも給与が維持できること。もちろん簡単なことではないので、給与を減らさないで労働時間を短くする取り組みを10年かけて進めました。