枡の生産量が全国シェア8割を占める岐阜県大垣市。年間120万個の枡を生産する木枡専門メーカーの大橋量器では、若いメンバーの斬新なアイデアを取り入れて、枡を使ったユニークな商品を次々と発表しています。なかでも枡のおひつ「COBITSU(コビツ)」は、現在はなんと約1年待ちなのだそう。コロナ禍で売上75%ダウンから、V字回復させた同社代表の大橋博行さんに話を伺いました。

コロナ禍で売上75%減!枡の新たな魅力を開拓

── 2021年クラウドファンディング(以下、クラファン)で、枡のおひつ「COBITSU(コビツ)」が、目標金額に対して5201%という驚異的な売上げを達成しています。この結果は予想されていましたか?

 

大橋さん:
ここまで大きな反響になるとは予想していなかったです。おかげさまで多くの方から受注いただき、応援購入額が1000万を超えて本当に驚きました。ただ、商品には自信があったので、スタートダッシュがうまくいけば「ひょっとしたら…」という期待はありましたね。

 

── 人気に火が着いた理由は何だと思いますか?

 

大橋さん:
「COBITSU」は、冷凍ご飯を電子レンジで温めるだけで、まるで炊きたてのようにふっくらとした美味しいご飯が食べられる枡のおひつです。以前よりも家で過ごす時間が増えたことで、「美味しいご飯を食卓でも楽しみたい」という方たちに喜んでいただけたのだと思います。

 

大ブレイク中のヒノキの香り漂う枡のおひつ「COBITSU」
大ブレイク中のヒノキの香り漂う枡のおひつ「COBITSU」

── 「COBITSU」誕生の裏には、コロナ禍が大きく影響していたそうですね。

 

大橋さん:
そうですね。もともと枡は、1300年以上前からお米などを計量する器として使われていました。ところが昭和40年代頃から、結婚式やイベントの鏡開きで枡が用いられるようになり、その頃から“お酒を飲む器”として世の中に広まっていったんです。

 

しかし、コロナ禍で結婚式のキャンセルが相次ぎ、2020年5月には前年同月比で売上げが75%減まで落ち込んでしまって。先行きが見えずオロオロしていた私に対して、営業チームが率先して、まずは「職人の雇用を守りたい」というクラファンを立ち上げてくれたんです。社員の気持ちや、応援してくださる周りの温かい気持ちがとても大きな支えになりました。

 

同社の枡製品はコロナ禍で大打撃を受け、売り上げが75%減に
同社の枡製品はコロナ禍で大打撃を受け、売り上げが75%減に

その後も、枡屋が作るヒノキの香りがするマスク「hinoki MASUKU」、足元に枡を使った「パーティション」など、社員からさまざまなアイデアが出て、片っ端から商品化して行きました。とにかく今できることを社員一丸となってやっていましたね。

 

ヒノキの香りがするマスク「hinoki MASUKU」も注文が相次いだ
ヒノキの香りがするマスク「hinoki MASUKU」も注文が相次いだ

そして、とあるきっかけで株式会社AMNが主催する「あいちモノづくりネットワーク」に参加し、そのご縁で、最先端のテクノロジーが搭載された家庭型ロボット「LOVOT」の開発者の一人、UI/UXデザイナーの南地秀哉さんと出会ったんです。そこから「COBITSU」の共同開発が始まりました。