「また観に来たい」お客さんとスタッフの距離がカギになる
—— 岡村さんが目指す「もっと豊かな鑑賞体験」について詳しくうかがいたいです。今回の映画館(Stranger)が既存の映画館と違うところは、鑑賞後のコミュニケーションに重きを置くところでしょうか?
岡村さん:
既存の映画館は、ひとりで来たら静かに映画を観終わって、さっさと出ていく場所だと思われています。
スタッフも挨拶やチケットの確認をするだけで、観客と踏み込んだ話をするわけではありません。
もし鑑賞後に、顔見知りのスタッフと『ここが良かった』『どう思う?』『他にお勧めある?』と、ちょっと話ができれば、満足度が高まるのではないでしょうか。
コーヒーショップやアパレルでも、店員さんと仲良くなれば楽しくなり、“この人から買おう”、“また来たい”という気持ちになりますよね。
映画も同じ。人と交わりながら楽しんでもらえたらと思います。
幅広いお客さんに楽しんでもらえるよう、スタッフは映画専門古書店や制作現場、接客のプロなど様々な人たちを集めました。
—— さまざまな分野からスタッフを集めるとのことですが、岡村さんが目指す“交流”は、多様なスタッフと観客が語り合うことでしょうか?
岡村さん:
本来は観客同士で盛り上がるのが自然ですが、見知らぬ人同士だとそうはいきません。
まずはスタッフが美術館におけるキュレーターのように鑑賞の前後に観るヒントを伝え、楽しみを引き出すことからですね。
話が盛り上がれば、腰を落ち着けて話したくもなるしょう。そこで、Strangerでは映画館のロビーの代わりにカフェを設けます。
実はStrangerの客席数は49席。一般的なミニシアターと比べるとかなり少ないほうです。
映画館単独での採算性を考えると、もっと席数を増やしたほうがいいと専門家からアドバイスを受けたのですが、カフェスペースをとることは譲れませんでした。
同じように、建物の軒先をお客さんや地域との交流スペースにするため、客席数を削ってつくりました。
目指すのは、“映画館スタッフに会いに行きたくなる映画館“。もっとカジュアルに映画鑑賞を通して、人と人が出会ってほしいです。
SNS発信でスタッフひとりひとりを身近に感じ、会えば友だちのような関係で映画を語り合えたらと考えます。
カフェではスタッフからの作品紹介や、映画関連のイベントも企画しています。