映画館は「立地、上映設備、料金設定」と教えられたけれど…

—— たしかに、“コミュニケーション”を掲げる映画館は聞いたことがありません。岡村さんのアイデアに、周囲はどんな反応を示しましたか?

 

岡村さん:
映画館づくりについて、20 人以上の業界関係者にヒアリングしましたが、スタッフと観客の“コミュニケーション”に触れる方はなかなかいらっしゃいませんでした。

 

そして大切なのは、やはり、立地、上映設備、料金設定だと教えてもらいました。

 

立地、上映設備、料金設定は確かに重要ですが、“人に話したい”、“体験を共有したい”欲求は誰もが心のなかに持っているはずです。

 

僕は年に 100 回以上映画館に通うほど映画好きですが、映画館で見知らぬ誰かと話が盛り上がった経験はありません。そして今、コミュニケーションをメインにした映画館もほとんどありません。

 

誰も言及しないからこそ逆に、僕がつくろうとしているのは、新しい映画館の在り方なんだ、と確信しました。

 

—— 新しいスタイルの映画館Strangerでは、お客さんにどんな風に過ごしてもらいたいですか?

 

岡村さん:
ミニシアターは、“独自カラーが強くて入りづらい、コアな映画好きが多い”イメージを世間から持たれているかもしれません。

 

でも、Strangerは新しいお客さんも来やすい雰囲気にしたいです。もちろん静かに独りで過ごしたい方も大切にします。

 

カフェだけの利用も大歓迎です。他館で観た映画についてスタッフと話が弾んで、半日もカフェにいたなんてお客さんが現れたら嬉しくなります。

 

こうした居心地の良さや鑑賞体験の深まりが、映画館に足を運んでもらえるきっかけになるんじゃないかな。

※この記事は2022年7月末時点の情報に基づいて執筆しています

 

PROFILE 岡村忠征さん

映画館Strangerチーフディレクター。広島県から上京後10年間映画産業にたずさわる。2011年、ブランディングデザインのアート&サイエンス株式会社設立

 

取材・文/岡本聡子 撮影/新井加代子 画像提供/岡村忠征