一度は諦めた夢が45歳になって動き出す

—— 現在はデザインやブランディングの仕事をされていますが、岡村さんと映画との出会いは?映画館を作るのが長年の夢だったのでしょうか?

 

岡村さん:
僕は映画が大好きな少年でした。映画に関わる仕事がしたくて広島から上京し、映画監督を目指して20代のうちに制作や配給、映画館などひととおりの仕事を経験しました。

 

10年ほど現場で働き、映画制作スタッフとしては成長しました。でも、このままでは監督になれないと悟りました。

 

なぜなら、監督になるには脚本を書かなければなりませんし、文学・哲学などの多方面のインプットが必要。しかし、制作現場にいると忙しすぎてその時間もとれません。

 

そこで映画雑誌を作って“映画批評”のアプローチで映画に関わり、ゆくゆくは監督になろうと考えました。

 

入り口からすぐの50平米のカフェスペース。カフェ担当のスタッフが常駐予定

そうして映画雑誌を作るためにデザインを独学するうちに、最終的にはデザインやブランディングを追求する道に進むことになったのです。

 

それから15年以上、デザインやブランディングのプロとしてクライアントのサポートをしてきました。45歳になった今、みずからが主体となって事業ブランドを立ち上げたいと考えるようになりました。

 

僕は一度映画産業から離れましたが、その後も大好きな映画をずっと観続けています。そんな自分の強みを活かせるのは、やはり映画業界なんです。

 

特に映画館はもっと豊かな鑑賞体験を提供する余地があると感じたので、新しいスタイルの映画館を作ることで勝負しようと決めました。

 

映画館づくりを目標にがんばってきたというわけではないのですが、振り返ると自分の人生の根幹にあるのはやっぱり映画業界への思いです。

 

そして、もっと豊かな鑑賞体験を求めて映画業界に新風を吹き込む映画館をつくるなら、ずっと暮らしているこの東京しか考えられませんでした。