シングルマザーとしての子育て経験
──保育士としての経験が活動のきっかけだったとのことでしたが、森田さん自身の子育てはいかがでしたか。
森田さん:
今、大学生の息子がいますが、私はシングルマザーで育ててきました。家事に子育てに仕事と、本当にすることがたくさんあって、私自身の子育ては本当にいっぱいいっぱいでした。
小さい息子を朝早くから保育園に預けて、私はそこから車で20分程行ったところの保育園で働いていました。息子が2歳の頃、勤務先でも2歳児クラスを担任しているときには、四六時中、イヤイヤ期と向き合っていました。
大勢の命を預かっていますし、仕事中はプロとして理性を持って平常心でいられるんですけど、仕事が終わって素の自分に戻ると、自分の未熟な部分や弱さから息子に当たってしまうこともありました。今思い出しても心が苦しくなるくらいです。
──特に苦労したことはなんですか。
森田さん:
父親がいない分、どうやって育てていけばいいのか、ずっと葛藤していましたし、まずは経済面をしっかりしなくてはと思っていたので、働くことで精一杯でした。
シングルマザーという言葉自体にも後めたさを感じていました。仕事復帰の難しさや当時は世間の冷たさも感じていましたし、職場から面接の時には「お子さんが熱を出したら休むことになりますよね」と言われることもありました。確かにその通りなんですが、子どもの体調不良で休むことになるのはシングルマザーだけではありません。
子育て中に様々な悩みに向き合っていると、誰かに聞いてほしいことも多くあります。これから子育てをする方にも、自分のような経験をして欲しくない、もっと子育てが楽しくなるような場所を作りたいと思いました。
コロナ禍で増えた子育ての悩み
──クラスの募集をかけると多くの申し込みがあったそうですね。
森田さん:
しばらく保育サロンの運営を私ひとりでしていたので、あまり多くの方を受け入れられませんでした。スタッフを増やして、0〜3歳までのおよそ45名程度を季節ごとに受け入れてきましたが、2倍近い応募があったこともありました。現在はコロナ禍で、クラスの定員は半分ほどにして、オンラインサロンも同時に開催しています。
──どのような相談が多く寄せられているのでしょうか。
森田さん:
コロナ禍以降は対面での活動は休止して、インスタライブやビデオ通話で育児相談に応じるなどオンライン上での活動に切り替わりましたが、実際にはまだ起きていない、未来のことで考え込んでしまうお母さんがとても多いです。
たとえば今、コロナ禍でマスクをしていることでコミュニケーションが取れない子になったらとか、家族以外の人と関わっていないので、表情が乏しい子になったらどうしようとなってしまいがちです。
しっかり子どもを育てなきゃと辛そうにしているお母さんが多いのが印象的です。子育ては、“孤育て”と言われることもありますが、どんどん孤立化してしまっている気がしています。
私は、まだ起きていないことよりも、まずは今、目の前にいるお子さんの笑顔を大切にしましょうと伝えています。それに、子どもはとても五感が鋭いので、お母さんと目と目を合わせて話せば、声や温もりでしっかりと愛情は伝わります。
私たち大人から見ると、自分が子どもの頃に経験したことができなくて可哀想だと感じていても、子ども自身は私たちのようには感じていないように思います。むしろ私たち親世代には想像もつかないようなクリアな力がぐんぐん育っていると思います。
──森田さんが目指すものはなんですか。
森田さん:
お子さんの月齢ごとの活動を提案しながらも、いちばんはお母さんの心を温かくしたいという思いがありまして。お子さんと接していながらもお母さんたちの表情をよく見て活動を進めています。
参加されるお母さんの表情や姿勢、発する言葉から自己肯定感が上がっている!と感じることが増えてきて、お母さんがいい方向に変わっていくと、お子さんの心も急ピッチで成長していくことが多いです。
自分の子育てに納得出来る、母親としての自分自身を認めることが一番難しいと思っています。心許せる身近な方に「うんうん」と頷いて話を聞いてもらえるだけで、心が穏やかになります。
少しでもいいのでお母さんの心に余裕が持てたらいいなという思いで活動を続けています。今、子育て中のお母さんたちの心がふんわり軽く、さらに色鮮やかになったらいいなという思いで活動を続けています。
PROFILE 森田麻琴さん
ビーンズファミリー株式会社代表取締役。0〜3歳親子が通う保育サロンの運営や、公式アプリを立ち上げ、日本中のママが繋がるオンラインコミニュティを主催。育児や女性の心の成長、仕事についてのお悩み相談、トイレトレーニング講座も開催。
取材・文/内橋明日香 写真提供/森田麻琴