ママ友には信頼の気持ちを伝える
── ママ友など周囲の保護者に頼るときのポイントを教えてください。
吉田さん:
頼み方のポイントは先ほどと同じ「KSK」です。敬意を持って、自分が相手を信頼していることを示しつつ、簡潔にお願いをして、実現したことに感謝をする。
たとえば、私はよく仕事の都合で保育園のお迎えに間に合わず、ママ友に連れて帰ってもらうようにお願いするとき、このようなメールを送っていました。相手の名を呼ぶときは、「○○ちゃんのママ」ではなく相手自身の名前を書いて、大人同士の関係として「あなただから頼める」という気持ちを込めるようにしています。
「いつもありがとう。困ったとき、真っ先に顔が浮かんだのがBさんだったの。今日、タクシー飛ばしてもお迎えに間に合わなさそうで、もしできたら一緒に連れて帰ってもらえないかな?7時半には迎えに行けると思う」
── 快諾してくれたら、どのように返信を?
吉田さん:
「安心した」「助かった」「頼んでみてよかった」…と、そのときの自分の気持ちの変化を正直に伝えます。迎えに行ったときも、スーパーのお菓子でもいいのでお土産を持っていったり、どんなふうに助かったかを具体的に話したりと、感謝を言動にして伝えて。
また、「今度は私が迎えに行くね」「土日のどちらか、うちに遊びに来ない?」と誘ったり、別の機会に上の子のお下がりを「着てくれる?」と差し上げたり、いただいたフルーツなどをおすそわけしたりもしています。
このようなやり取りが、一人ひとりの「頼るスキル」、つまり「受援力」を養うのだと思います。
一方で、もし断られてしまった場合は、「言いづらかったでしょう?伝えてくれてありがとう。何かあったらまた頼むね」「こっちにも頼んでね」と伝えておくと、相手にも申し訳なさを感じさせずにすみますよ。
── 断った側も、関係が途切れないという安心感がありそうです。
吉田さん:
コロナ禍になってから、ちょっとした立ち話の機会もなく、ママ友をつくりにくくなりました。今ある関係を大事にしつつ、たまたま同じクラスのママさんにお会いできたら、ためらわずに話しかけ、何かあったときのために、と連絡先を交換するようにしています。
ママ友づくりは急な休校の連絡が回ってきたり、情報共有をしやすいというメリットもありますが、誰かに「頼る」ことで、「人とつながる」スキルも高まります。未来の読めない時代だからこそ、人に助けを求める力「受援力」は毎日の生活の大切なツールになるのです。
PROFILE 吉田穂波さん
医師、医学博士、公衆衛生学修士、神奈川県立保健福祉大学大学院教授。六児の母。博士号取得後、ドイツ、イギリスで産婦人科、総合診療の分野で臨床研修を経験。08年、ハーバード公衆衛生大学院卒業。著書に『「頼る」スキルの磨き方』(KADOKAWA)など。
取材・文/有馬ゆえ