自分一人で家事、育児を回せないのは母親失格──そう感じて、人に「頼る」ことに罪悪感を抱く人は少なくないはず。しかし、『「頼る」スキルの磨き方』の著者で医師の吉田穂波さんは「“頼るスキル”は大人に最も必要な力」だと言います。

 

頼ることは、なぜいいことなのか?パートナー、ママ友にうまく頼り、信頼関係を深める方法とともに聞きました。

「頼る」は信頼と尊敬を示す行為

── 家事や子育てについて、自分ひとりで完璧にこなせるのがいい妻、いい親だという考えを捨てられない女性は少なくないように感じます。そもそもなぜ「頼る」ことが必要なのでしょうか。

 

吉田さん:
ひと言で言えば、心の余裕を確保するためです。

 

核家族化し、また共働きが当たり前になった現代、ひとりで仕事も家事も育児も完璧にこなすことはかなり難しい。自分でしなければと思ってすべてを抱えると、疲れきって心の余裕がなくなり、「家族なんていらない」「子どもなんてかわいくない」という発想になりかねません。

 

私もかつては、子育ての中で人に頼ることに対して罪悪感がありました。それを覆してくれたのは、ドイツとイギリス、アメリカでの子育て経験です。それらの国々では、人に頼ることは信頼と尊敬を示す行為であり、コミュニケーションであるという土壌がありました。

 

事実、研究結果からは、人に頼ることが自分や相手の幸福や健康状態を向上させること、人間関係資本の充実(人間関係という財産を増やすこと)につながるとわかっています。

 

── 家事や育児を母親以外の人がすることで、子どもにはどんな影響があるのでしょうか。

 

吉田さん:
私自身、両親が共働きで、保育園や学童保育をはじめ、たくさんの大人に関わってもらいながら育ちました。親以外の大人の生き方、発想方法、子育て方法を知ると、子どものなかの許容範囲が広がるんですよね。親以外の人に育ててもらった──それは、社会に出るときのための大切な経験になります。

 

人に助けられた経験は、人間に対する信頼や地域とのつながりを育むといわれます。他方で、誰かを助けた経験は、その人の自己肯定感を上げ、健康状態も向上させます。「頼る」経験は、頼った側、頼られた側の両方にメリットがあるのです。

 

あなたの「頼るスキル」はどれぐらい?吉田穂波氏両親学級資料より抜粋