47都道府県、700以上の受け入れ地域
── 「おてつたび」を受け入れている地域について教えてください。
永岡さん:
現在47都道府県に700以上の受け入れ地域があります。どの事業者さんも、基本的には少子高齢化による人手不足を解消したいとのことで「おてつたび」を活用いただいています。
── 地域にとっては、「おてつたび」をきっかけに利用者に移住を考えて欲しいという考えもあるのでしょうか。
永岡さん:
もちろんそうなったら嬉しいという部分もあるかと思いますが、おてつたびは移住や定住をゴールとしていません。
地域の事業者さんのなかには高齢の方もいらっしゃり、おてつたびを通してご自身の孫世代の旅人と出会って、「長年この地域に住み、取り組んでいるからこそ気づかなかった新たな地域の魅力や事業の魅力を知ることができた」と、出会いそのものを喜んでくださっている方が多いです。
旅人にとっても地域の事業者にとっても、地域での出会いが新たな刺激になっているのだと思いますし、出会いを通して関係人口を構築することに大きな意義があると思っています。
一度の旅で終わらない、おてつたびを通した関係性
── 関係人口というワードがありましたが、「おてつたび」を利用した方が同じ地域を再度訪れることも多いのでしょうか?
永岡さん:
そうですね。なかには、おてつたび後にそのままプチ移住のような形で地域に根づいた方もいらっしゃれば、おてつたび先に就職した方もいらっしゃいます。また、お手伝いした農作物を、都内に戻ってから自身のバイト先のカフェのメニューに取り入れた方もいらっしゃいますね。
もう一度おてつたびを利用して再訪する方もいらっしゃれば、今度はお客さんとして宿泊しに行ったり農家さんの商品を購入したりなど、その後も関係を続ける方は多いです。
── 「おてつたび」を利用して旅をしている方の反応を教えてください。
永岡さん:
「あらためて自分の人生観、価値観について考えるきっかけになった」という声をいただくことが多いですね。農業をお手伝いしたことにより農業に興味を持ち、就農をした方もいます。
また、みなさん普段は消費者側として農作物や宿泊施設に携わることが多いので、提供する側を体験したことで気づくことや意識が変わることが多いようです。
個人的には、同じ地域に行ったとしても、毎回一人ひとりまったく違うストーリーを持ち帰られていることが印象的です。年齢や、現在自分がおかれている環境、心境によっても旅のストーリーが変わるんだと思います。旅の面白さを利用者のみなさんから教えていただいています。
── 「おてつたび」を受け入れられている地域の事業者さんの声を教えてください。
永岡さん:
おてつたびを受け入れるようになってから「繁忙期が楽しみになった」という声をいただいています。繁忙期って通常はそこまで手放しで嬉しいものではないと思うのですが、おてつたびを通しての出会いが、事業者さんにとっても刺激になっているようです。
また、最近では面白い動きが出てきました。おてつたびを通して、農閑期の事業者さんが農繁期の事業者さんのお手伝いに行き、交流を深めているようです。四季がある日本だからこそできることだと思いますが、利用者としても受け入れ先としても楽しんでいただいているようです。
── それはとてもいい循環ですね!一方で、おてつたび利用者のなかにはその業種が未経験という方もいると思うのですが、繁忙期に未経験者が来ることによる事業者の負担は大丈夫なのでしょうか?
永岡さん:
やはり「人手不足解消」というところが大前提になりますので、そこが負担になってしまうと成り立たなくなってしまいます。そうならないように、スムーズに仕事に入っていけるよう、私たちのほうで事前にサポートをしております。
そのうえで、私たちが目指していることは「人手不足を人と人が出会うチャンスに変えたい」というものです。
人手不足は社会の大きな課題だと認識していますが、働く人を「労働力」としてのみ見るのではなく、「出会い」として捉え、交流を楽しみ、地域や事業のファンにし、ファンを増やしていく。そんな世界をつくっていきたいと強く思っているため、受け入れ先の事業者の皆さんにもその思いが伝わり「おてつたびを通しての出会いが毎回楽しみだよ」と言ってもらっているのだと思います。