少子高齢化による人手不足に頭を抱える地域と、働きながら地域の魅力を深く知る旅をしたい人のマッチングサービス「おてつたび」が今注目されています。

 

まだ知られていない地域の魅力を伝えるために、そして地域の労働力不足を解消するために立ち上げた「おてつたび」とは?株式会社おてつたび代表取締役CEOの永岡里菜(ながおか・りな)さんにお話を伺いました(全3回中の3回目)。

「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた「おてつたび」の魅力

── おてつたびのサービスについて簡単に教えていただけますでしょうか。

 

永岡さん:
はい。「おてつたび」は、「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた造語です。短期的・季節的な人手不足で困っている地域の方と、地域に興味がある方が出会えるマッチングサービスです。

 

具体的には、人手不足に困っている農家や旅館など地域の方が、手伝って欲しい仕事の内容やそれに応じた報酬をWEBサイトに掲載します。それを見た利用者が、行ってみたい地域に申し込んでマッチングすると、働きながら観光や地域の人との交流を楽しめるサービスになっています。

 

サービスの特徴は2つです。

 

1つ目は、お手伝いをすることで最低賃金以上の報酬が得られるため、旅費や交通費を軽減することができます。さまざまな地域に行ってみたいと思っていても、資金不足でなかなか行けない…という若年層の方は少なくありません。

 

報酬を得られることで「気になる地域に気軽に行けるようになりました!」という声をいただくなど、今までなかなか行けなかった地域に気軽に足を運ぶきっかけになっていると言えます。

 

永岡さん

2つ目は、お手伝いという共同作業を通して地域の方と交流し、その地域の魅力をよりダイレクトに知ることができるという点です。

何もないと思われている地域に人が来てファンになる仕組みとは

── このサービスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

永岡さん:
私は三重県の尾鷲(おわせ)市という、東京から行くには車や電車を使って6時間ほどかかる漁業と林業の町に生まれました。進学とともに関東に出てきて出身地を伝えると「それはどこ?」と言われることも多くて、良いところが沢山ある大好きな地元ですが、その魅力を言葉で伝えることに難しさを感じてきました。

 

尾鷲市で遊ぶ子どもの頃の永岡さん

たとえば尾鷲市の場合、「海や山もあって自然が豊かなんだよ」「魚や山菜がとてもおいしいんだよ」「人がとても優しくてのんびりした場所なんだよ」など、沢山の魅力を言葉で伝えても「それって他の田舎と何が違うの?」と言われてしまい、差別化が難しかったりしました。「来てくれたら分かるのになぁ」ともどかしさを感じていました。

 

その後企業に就職し、出張でさまざまな地方に行く機会があったのですが、そのときに、「全国には、尾鷲市のように足を運んで初めて知ることができる魅力的な地域がこんなに沢山あるんだ」ということに気づいたんです。

 

そもそも、その地域に行くきっかけがないと魅力は伝わりにくいですよね。そういう地域に、まずは人が来るような仕組みをつくって、来てくれた人がその地域のファンになる。そんな世界をつくりたいと思って立ち上げました。

 

── どのような年代の方が、どのようにサービスを利用されていらっしゃるのでしょうか。

 

永岡さん:
はい。大学生など20代の方を中心に、幅広い年齢の方にご利用いただいています。

 

たとえば「お手伝いは午前中のみ」という受け入れ先もありますので、ご自身の仕事をしながらワーケーションのような形で利用されている方もいらっしゃいますし、最近では、子育てがひと段落された50代以上のご夫婦のご利用も増えてきました。

 

そのほか、大学生の娘さんとそのお母様の親子で利用される方や、ご自身の第二の人生を見据えてキャリアを試したいと利用される60歳以上の方もいらっしゃいます。

 

日本のさまざまな地域に行ってみたい方、農業を勉強したい方、いつもと違った旅のかたちを楽しみたい方、ニーズはそれぞれ異なるのですが、皆さん共通しているのは「地域の方と深く交流して、地域を知りたい」という想いですね。

 

── そうなんですね。みなさんどれくらいの期間地域に滞在されているのでしょうか。

 

永岡さん:
期間は1泊2日から長いと1か月など、お手伝いの種類や時期などによって異なります。基本的には1週間から10日間ほどの期間が多いですね。