「子宮筋腫は良性の腫瘍だからこそ、『絶対』の治療がなく悩みやすい。選択肢を知る、ということがまずは大切で、自分の身体と向き合った上で合理的な判断をしてほしい」(槝之浦佳奈医師)

 

レスリング選手の伊調馨さんが540gもの腫瘍を摘出したことを公表して話題になった 『子宮筋腫』。30代以上の女性の3人に1人にあると言われ、子宮の病気の中ではもっともメジャーなものの1つです。

 

過多月経や過重月経の原因になる場合があり「気づいたときには重い貧血になっていた!」というケースも多く見られます。また、場所やサイズによっては膀胱や腸を圧迫したり、不妊症や流産、早産の原因になることも…。

 

しかしいざ治療を進めようとすると、「正解」がないからこそ悩むのが子宮筋腫。大切なのは多様な選択肢を知り、そのメリット・デメリットを正しく理解すること。

 

今回は九州医療センターの産婦人科医で女性ヘルスケア専門医でもある槝之浦佳奈(かしのうら・かな)医師に、子宮筋腫をめぐるあれこれと、子宮全摘をめぐる誤解、術後の性生活まで徹底的に伺いました。

子宮筋腫の原因ってなに?再発するってホント?

子宮筋腫の原因は残念ながら、未だにはっきりとわかっていません。

 

「子宮筋腫の患者さんにお話を聞くと、ご家族も同じ症状を持っているという場合が多いですが、環境要因なのか、体質なのか、遺伝的要素があるのかはわかっていません」

 

子宮筋腫は妊娠の準備や女性らしいカラダづくりを役割とする「エストロゲン(卵胞ホルモン)」によって大きくなることはわかっていて、閉経を迎えると自然と小さくなります。子宮筋腫が「がん化」することは稀で、0.1%以下と言われています。

 

また、子宮筋腫は再発する症状であることが知られています。

医師の説明を受けるイメージ図(PIXTA)

「大きな子宮筋腫が1個ある場合と、複数個の子宮筋腫がある場合では、複数個ある方の方が再発率は高いようです。複数個の筋腫ができる「多発性子宮筋腫」の場合、目に見える筋腫をとっても、小さな筋腫の芽が取りきれないことが原因で再発すると考えられています」

ポイントは「場所」「サイズ」「その他の症状があるか」

子宮筋腫には3つの種類があります。子宮の筋肉の中にできる「筋層内筋腫」、子宮の外側に出っ張るように筋腫ができる「漿膜下筋腫」、そして子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」の3種類です。 

 

このうち、子宮の中にできる「粘膜下筋腫」はサイズが小さくても過多月経や不正出血、不妊症などの症状が現れやすいので、早期の積極的な治療が必要になります。

 

「子宮筋腫と診断されたら、まずは自分の筋腫が3種類のうちどの筋腫なのかを確認してください。

 

大きな腫瘍があっても生理にまったく影響がない方がいる一方で、サイズが小さくても過多月経に悩む方もいます。

 

筋腫のサイズだけで判断せずに、筋腫の場所、その他の症状があるかないか、挙児希望があるかないかを基準に治療法を選択していきます。

 

筋腫の場所や状態を正しく知るためにはMRIを撮ることが有効です」