昭和30年ごろ、宮崎県で始まったとされている「流しそうめん」は、瞬く間に全国へ広がり、もはや日本の夏の風物詩に。夏になると、全国津々浦々へ、そうめんを流しに行くという「世界流しそうめん協会」会長の上田悠貴さんに、流しそうめんの魅力やハマったきっかけについて伺いました。
全世代を魅了する流しそうめん
── 今年も暑い夏がやってきました。流しそうめんの季節到来ですね。今ちょうど忙しい時期ではないでしょうか?
上田さん:
夏の時期はやはり忙しいですね。2012年に「世界流しそうめん協会」を発足して以来、10年にわたって全国各地で出張流しそうめんを行っているのですが、コロナ禍以前は6月から9月にかけて、毎日のように依頼がありました。今年はぼちぼち…といったところでしょうか。
── どんなイベントに参加されるのですか?
上田さん:
流しそうめんは、子どもから老人まで年齢問わず楽しめるので、ちょっとした「夏祭り」で呼ばれますね。たとえば地域の子ども会や保育園、自治会や老人ホーム、商業施設の夏祭りイベントなどです。社員の慰労イベントのひとつとして、企業に赴いてオフィスで流すこともあります。
海外で流したこともあります。中国の日本企業のデパートで、イベントを行いました。中国では流しそうめんが珍しいのか、日本以上にギャラリーが盛り上がりました。おかげさまで、翌年も呼んでいただいて中国へ。しかし、その翌年はコロナで残念ながら開催されずでしたね…(涙)。
── 日本で出張流しそうめんを行った際のみなさんのリアクションはどうですか?
上田さん:
企業向けのイベントでは会議室で流しそうめんを行うことが多いのですが、「ああ、流しそうめんか」みたいな感じで、始める前は冷ややかな目で見られることも。でもいざ始まるとみなさん喜んで、盛り上がってくれて。こちらとしては「よしよし!楽しいだろ!」という感じです(笑)。
流しそうめんのすごさは、そうめんを流し始めるとみんなが笑顔になるところです。子どもから高齢者までいっしょに楽しむことができますし、うまくキャッチできるかどうかわからないワクワクドキドキ感もあります。キャッチできなかったときの悔しさもあって、ゲーム性のある点がまた魅力ですね。みんなの喜んでくれる顔が、私のやりがいになっています。
── そもそも、どうして流しそうめんをするようになったのですか?
上田さん:
私は京都南部の出身で、地元は竹や京タケノコの産地として知られています。しかし近年では生産者の高齢化が進み、竹林が放置されるように…。これらは京都だけでなく、日本全国で問題になっています。
竹って、想像以上に成長が早いです。切らないとあっという間に伸びていき、本数もどんどん増えていきます。春にタケノコを採らないと、夏頃には竹は6〜7mの高さになります。1年であたり一面が竹に覆われてしまうんですよ。
── 竹が増えるとどのような問題があるのですか?
上田さん:
竹の根っこは下に伸びるのではなく横に伸びるため、地滑りの原因になります。また成長速度が早いため、瞬く間に針葉樹や広葉樹に侵食していき、他の木の成長を妨げます。竹林が広がると暗くなり、人の手が入れにくくなり、ゴミの不法投棄の増加にも繋がることに。
毎年きちんと手入れをすればいいのですが、一度放置するとそこから元の状態に戻すのが本当に大変なんですよ。
そのため放置竹林の問題を解決できないかなと、竹灯籠などの竹を使ったモノづくり体験を実施していましたが、根本的な解決にはなかなか繋がりませんでした。放置竹林の問題について人々に知ってもらうきっかけになればと思って、流しそうめんを始めたんです。