「スナックを継がない?」ママの誘いに驚きと困惑で

「びっくりしたものの、そのときにはもう、“スナック沼”にハマっていたんでしょうね。もっとこの場所を知りたくなり、すぐにアルバイトとして働き始めました」

 

毎週アルバイトで通い始めると、だんだん顔なじみのお客さんが増えてきました。

                                                

「定期的に会うお客さんと話をしていると“あの人も元気にしているから、私もがんばろう”と活力をもらえるんですね。この仕事は面白いなと、やりがいを感じるようになりました」

 

その頃、せつこママは70歳を超える年齢に。コロナ禍により客足も遠のき、引退も考え始めていました。

 

せつこママとしては、25年間経営してきた店を何らかの形で残し、常連客にもそのまま通ってほしい思いがあったようです。

 

そこで、後継者として白羽の矢が立ったのが坂根さんでした。

 

「最初は“この店継いでみない?”“いやいや、ムリですよー”と、互いに冗談半分だったんです。それが、だんだんママも“本気で継いでほしいと思っているのよ”と言ってくれるようになりました。

 

もともと私は、在学中から国立市でゲストハウスの運営に携わり、1年間休学してカンボジアのホテルで働いた経験もあります。

 

お店にも、以前から知り合いの国立市観光まちづくり協会の方や、商工会の方が遊びに来てくれたことも。

 

そういう様子を見て、せつこママは私の人脈や経験を信頼してくれたのかなと思います」

 

とはいえ当時、坂根さんはまだ22歳。キャリア志向が強かったため、大学卒業後は企業に就職し、バリバリ働くつもりでした。そのため、新卒でスナックを継ぐには迷いが…。

 

「就職しても、仕事が終わったら大好きなスナックに戻ってくるかもしれないとは薄々感じていました。

 

でも、ママとして働くとなると話は別です。やっぱりハードルは高いし、企業で働き、成果を出してみたい思いもありました。

 

だから、簡単には返事ができなかったし、すぐには決断できませんでした」